可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 尾焼津早織個展『ハイパーフレーミング・コミック』

展覧会『エマージェンシーズ!037 尾焼津早織「ハイパーフレーミング・コミック」』を鑑賞しての備忘録
NTTインターコミュニケーション・センターにて、2019年5月18日~8月3日。


通常とは異なったコマの割り付けで作成した漫画を撮影して動画にする「ハイパーフレーミング」という尾焼津早織の創案した技法による作品3セット(マンガ+動画)を展示。

《宇宙人、ひとり。》は、タコのようなステレオタイプの宇宙人(?)が穴の中で目を覚まし「ここはどこかしら」と自問するコマから始まる。カメラはゆっくりとズームアウトするうち、最初のコマの上に「テチテチ」と歩くキャラクターの足が描かれたコマが、画面下には最初のコマの宇宙人(?)の眼が大写しのコマが現れる。さらにカメラが引いていくと、画面右に宇宙人(?)の「足音?」「誰…?」という思いが描かれたコマが…、というように中央に小さく描かれたコマの回りに少しずつ大きく描かれた次々と描かれていて、カメラがズームアウトするごとに次のコマが画面に現れてくることでストーリーが展開していく。
《メリー・ゴー・ラウンド》は、円状にコマを配している。カメラは円の上部にある場面から反時計回りに映し出していく。途中、この作品の構造をイメージさせる回転木馬を描いたシーンを挟みつつ、カメラは最初のシーンに戻り、再び同じストーリーが展開することになる。
《星の便り》は、左右のコマが共有する部分を持つように構成されていて、カメラが右側のコマを縦に撮影していき、次いで左側のコマを撮影することで、最初に出て来たセリフの意味合いが別の文脈に置かれることで意味合いを変える。

 

技法の独創性に舌を巻くほかない。3作品とも、宇宙のどこかにある星を舞台にしたSFないしファンタジーとして世界を共有しており、柔らかい印象の愛らしいキャラクターが登場しながら、切なくも不穏な余韻を残す。低温火傷しそうな作品群だ。