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芸術鑑賞の備忘録

映画『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』

映画『ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち』を鑑賞しての備忘録
2018年のカナダ・ベルギー合作映画。
監督・脚本は、キム・グエン(Kim Nguyen)。
原題は、"The Hummingbird Project"。

ヴィンセント・ザレスキ(Jesse Eisenberg)は、ブライアン・テイラー(Frank Schorpion)に対して、株式の高頻度取引で確実に利益を上げる計画への出資を求める。その計画とは、カンザス州のデータセンターとニュージャージー州ニューヨーク証券取引所のサーバーとの間を直線で結ぶ光ファイバーケーブルを敷設することで、シカゴ・ニューヨーク間のデータ通信を17ミリ秒から16ミリ秒に縮め、その時差を利用して同時発注の銘柄を先回りして購入するというものだった。面白いアイデアだがヴィンセントが信用に値する人物か決めかねるというブライアンに対し、ヴィンセントはかつて配管工として働いていた際に頭を強く打ち付け、その際「ライン」に執着するよう啓示を受けたという経験を語ることで、出資を取り付ける。ヴィンセントは同僚で従兄弟でもある天才的な通信システムの開発者アントン・ザレスキ(Alexander Skarsgård)とともに「計画」を進めるため、株式の高頻度取引を事業とするトレス・サッチャー社に辞表を提出して建物を後にする。二人の上司であるエヴァ・トレス(Salma Hayek)が二人の不審な動きを見咎め、アントンは会社の機密を持ち出すことになると怒り狂うが、アントンはヴィンセントと行動をともにする。二人は掘削と通信ケーブル敷設の専門家マーク・ヴェガ(Michael Mando)を仲間に加える。ヴィンセントはマークとともにケーブル埋設予定地の買収を開始し、アントンは1ミリ秒短縮のためのシステム構築に必死に取り組み始めた。ヴィンセントが出資者のブライアンに対して大風呂敷を広げたことを、アントンは「計画」が動き出した後になって知ったのだった。

 

ヴィンセントの安直な発想に基づく馬鹿げた構想は、ゴリアテに立ち向かうダビデに擬えることで自己正当化(自己弁護)され、アントンという身内の頭脳の存在や、右腕となるマークらの助力を得て、実現へ向かう。だがヴィンセントのlineやstraightに拘るリニアな思考(進歩主義であり速度信仰でもあるり、重機による水平掘削に象徴される)は、バーの女性マーシャ(Sarah Goldberg)やアーミッシュの男性(Johan Heldenbergh)の視点を導入することでネガティヴに戯画化されている。