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芸術鑑賞の備忘録

映画『テルアビブ・オン・ファイア』

映画『テルアビブ・オン・ファイア』を鑑賞しての備忘録
2018年のルクセンブルク・フランス・イスラエル・ベルギー合作映画。
監督は、サメフ・ゾアビ(סאמח זועבי/Sameh Zoabi)。
脚本は、ダン・クレインマン(Dan Kleinman)とサメフ・ゾアビ(Sameh Zoabi)。
原題は、"תל אביב על האש"。英題は、"Tel Aviv on Fire"。


エルサレム在住のパレスチナ人サラーム(Kais Nashef)は不器用で頼りない青年。ヘブライ語が堪能なことから、叔父バッサム(Nadim Sawalha)が製作するパレスチナの人気テレビドラマ『テルアビブ・オン・ファイア』の雑用係として採用されている。ある日、イスラエル軍将校イェフダ(Yousef 'Joe' Sweid)の執務室パレスチナ人スパイ・ラヘル(Lubna Azabal)が訪れるシーンの撮影で、イェフダがラヘルに対して「爆発的」と形容する科白は不自然だとサラームは主張。脚本家でもないサラームの主張に耳を貸す雰囲気がない中、ラヘルを演じるフランス人女優タラ(Lubna Azabal)だけは強く賛意を示す。撮影所のあるラマッラーの往復には必ずイスラエルの検問所を通らなければならない。検問所で女性兵士(Alma Hemmo)に出くわしたサラームは「爆発的」という言葉で女性を形容するのはどう思うかと突拍子もない質問をしてしまう。テロリストの疑いをかけられたサラームは尋問のためイスラエル軍司令官アッシ(Yaniv Biton)の元に連行される。妻がはまっているテレビドラマの脚本家だと釈明したサラームに、アッシは興味津々。脚本を没収の上でサラームを解放する。翌日、再び検問を通過しようとしたサラームはアッシに呼び止められ、自作の脚本を手渡される。サラームはアッシの入れ知恵により半ば強制的にイェフダのキャラクターを変える提案を重ねていくが、脚本のサラ(Ula Tabari)はイスラエルを美化するものだと反発、遂には脚本を降りてしまう。バッサムは次々とアイデアを提案してくる甥のサラームに期待して、ナビル(Amer Hlehel)とともに脚本を担当するよう告げる。作品の中核となるラヘルとイェフダの場面を任されたずぶの素人のサラームは何から書き始めていいものか途方に暮れるのだった。

 

劇中劇ではパレスチナ人のラヘルがスパイとしてイスラエルに送り込まれ、そのドラマを製作する現場ラマッラー(パレスチナ)にはイスラエル軍司令官アッシからサラームが送り込まれるという入れ籠構造になっている。サラームと幼馴染みのマリアム(Maisa Abd Elhadi)との恋愛、アッシの夫婦関係に加え、サラームと主演女優タラや衣装係マイサ(Laëtitia Eïdo)との関係も織り込まれる。
劇中に時折描かれるテレビドラマを楽しみに視聴する人たち。彼女たちとともに、ドラマのエンディングを期待しよう。見事なエンディングが待っている。