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芸術鑑賞の備忘録

映画『グッド・ワイフ』

映画『グッド・ワイフ』を鑑賞しての備忘録
2018年製作のメキシコ映画。100分。
監督・脚本は、アレハンドラ・マルケス・アベヤ(Alejandra Márquez Abella)。
原案は、グアダルーペ・ロアエサ(Guadalupe Loaeza)の小説"Las niñas bien"。
撮影は、ダニエラ・ルドロウ(Daniela Ludlow)。
編集は、ミゲル・シュバーディンガー(Miguel Scheverdfinger)。
原題は、"Las niñas bien"。

 

1982年のメキシコシティ。ソフィア(Ilse Salas)が美容院で洗髪し、爪を研いでもらっている。豪邸が建ち並ぶラスロマスの自邸で、誕生日パーティーが催されるのだ。今回は、ケータリングではなく、自家製の料理でもてなすことにしている。食器やグラス、飾り花の差配はもちろん、メイン・ディッシュのタコについては調理法についても指示を出すつもりだ。そして、美容院で手入れした身体を包むのは、ニューヨークで購入したアイボリーのドレス。注目を一身に集めるだろう。欠けているとすれば、フリオ・イグレシアスのようなスターの存在だけ。パーティーが始まり、会員制のクラブで自分の取り巻きになっているアレハンドラ(Cassandra Ciangherotti)、イネス(Johanna Murillo)、クリスティーナ(Jimena Guerra)、ロレーナ(Ana José Aldrete)たちをはじめ、大勢のゲストで賑わっている。会場を回っていると、夫のフェルナンド(Flavio Medina)が屋外にいるのを目にする。母親の奨めで結婚した夫は、彼の亡き父親が設立した証券会社で重役に収まり、普段から多忙を極めていた。ソフィアが近寄ると、フェルナンドはガレージに用意した誕生日プレゼントの高級車を示すのだった。パーティーが無事終わり、ソフィアは、末っ子のギャビー(Azul Alenka)がごねるのを宥めて、3人の子どもたちをキャンプに送り出す。この頃テレビではメキシコの対外債務累積問題を盛んに報じ、ペソの価値の危機が話題になっていた。自宅の水道から水が出なくなり、近所の住人は行く先を訪ねても「休暇」としか答えず旅立っていった。ソフィアはアレハンドラからアナ=パウラ(Paulina Gaitan)の家で行われるランチに誘われる。渋々アレハンドラに付き合うソフィアだったが、成り上がり者のアナの言葉遣いや振る舞いが鼻について仕方が無い。ある日、社長のハビエル(Diego Jáuregui)とその妻マリルス(Claudia Lobo)と会食したフェルナンドとソフィアは、ハビエルからメキシコの経済危機にアメリカ人出資者が資金を引き揚げたため会社が危機的状況にあると告げられ、フェルナンドに父親の起こした会社の跡を継ぐよう求められる。フェルナンドはハビエルの無責任さに立腹し、ソフィアを伴って席を立つ。

 

クレジットカードが使えないとか、ナイトクリームが底をつくとか(皮膚に異常が表れるのはストレスが原因だろう)、取り巻き連中や使用人が姿を消していくとか、子どもたちが家庭状況の変化を感じ取って投げかける率直な科白とか、ソフィアは窮地に追いやられていくが、急に生活は変えられない。だが、テニスでのボールの打ち方や、子どもたちの前での言葉遣い、さらにピニャータの際の行動など、ソフィアが変わってしまう姿が表される。
次の場面の科白を先出しにする手法、クラップなどを利用した音楽なども効果的。