展覧会『内田麗奈「クロマニヨンの夢」』
西武百貨店渋谷店オルタナティブスペースにて、2020年6月27日~7月12日。
ベロア地に描いた絵画をカーテンに仕立てた作品3点を中心とする内田麗奈の個展。
光沢のある厚手のベロア地に描き込まれているものが何かを明確に把握することは難しい。「クロマニヨンの夢」というタイトルから、黄色味や赤味を帯びたくすんだ色合いが、ラスコー洞窟の壁画のようなイメージを作り上げていることが分かる。木枠に張るのではなくてカーテンに仕立てているのは、襞を作るためであろう。それは、洞窟壁面の持つ凹凸や陰影に擬えるためだろうか、あるいは地層の褶曲による幾星霜の表現のためであろうか。採光のための窓を塞ぐことで室内を暗闇へと転じる遮光カーテンは、即席の洞穴を出現させるタイムリープ装置である。炎の光の揺らめきが動物たちにアニマを与えた壁画に対し、カーテンの絵は、カーテンがレールを滑り、あるいは風に靡くとき、動き出す。
会場に置かれた木箱の中には、作品の原案となった、クロマニヨン人の男女の生活を現代的な感覚で描く絵コンテが置かれている。空から降ってくる金属(?)のスプーンや砂糖のブロックによって建設される住居のエピソードなど歌舞伎の向こうを張るような荒唐無稽のアナクロニスムは、現代生活の特質を照射したり、人間の本質的な欲求を暴いたりする、諧謔精神の反映だ。ギャグ漫画のような軽さは、カーテン作品の抽象度の高さや静謐さと強いコントラストを成している。