可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢』

映画『ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢』を鑑賞しての備忘録
2020年製作のアメリカ・イギリス合作映画。114分。
監督は、ニーシャ・ガナトラ(Nisha Ganatra)。
脚本は、フローラ・グリーソン(Flora Greeson)。
撮影は、ジェイソン・マコーミック(Jason McCormick)。
編集は、ウェンディ・グリーン・ブリックモント(Wendy Greene Bricmont)。
原題は、"The High Note"。

 

R&Bの女王として君臨するグレース・デイヴィス(Tracee Ellis Ross)。彼女の個人秘書マギー・シャーウッド(Dakota Johnson)が、レコーディング・スタジオでオーディオ・エンジニアのセス(Eugene Cordero)とともにグレースの代表曲"Bad Girl"のライヴ音源をミキシングしている。ミュージシャンがスタジオに入ってきて作業は中断。マギーは年代物の黄色の愛車で慌てて買い出しへ。車を走らせていると、グレースの巨大な屋外広告の目に飛び込んでくる。クリーニング店、ジューススタンド、ドラッグストアなどなどいくつもの店を回り、グレースの邸宅に向かう。管理人のゲイル(June Diane Raphael)に車のキーの場所を尋ねるが、それはあなたの仕事と軽くあしらわれる。長年グレースに仕えているゲイルの目には、3年目のマギーはインターン程度にしか映っていないらしい。何とかグレースの高級車に乗り込んだマギーは空港へ飛ばす。グレースがハワイ公演から戻ってくるのだ。タラップを降りてきたマネージャーのジャック・ロバートソン(Ice Cube)から遅いと注意され、グレースからも6分の遅刻を指摘される。マギーはグレースの運転でともにグレース邸へ。ダン・ディーキンズ(Eddie Izzard)がリハーサルを自分の家で行いたいと言っています。グラミーで私はいくつ受賞してるの? 11です。ダンは? 8ですね。私が上なの。文句は言わせないわ。帰還したグレースは早速、喉のケアを行う。ジャックはグレースに対してラスベガスでの長期公演を持ちかけるが、グレースは提案に乗り気では無さそう。マギーはグレースのいないところでジャックに問いかける。ファンはグレースの新曲を待っていると。前作の発表から既に10年が経過していて、マギー自身、長年グレースを崇拝してきたファンとして新作を楽しみにしているのだ。ジャックは前作のセールスが失敗だったこと、そしてこの邸宅のローンを返済するためにも着実な成功の積み重ねが大切だと説く。帰宅したマギーはPCに向かってグレースの楽曲のミキシングを続ける。マギーはルームメイトで看護師のケイティー(Zoë Chao)からヘッドフォンを投げつけられる。私は寝てるんだ! グレースの新たなツアーが始まると、マギーも同行する。ある日、公演前の楽屋にジャックがラスベガスの興行主を伴って入ってくる。やっとお会いできました。あなたのために照明も音響もグレードアップさせますよ。可能なら10年でも続けていただきたい。ジャックはホクホク顔。グレースは笑顔を絶やさないがマギーには当惑が見えていた。マギーがグレースを呼ぶ。ステージでトラブルがあるので来てもらえないでしょうか。ツアーから戻り、オフを過ごしていたマギーは、食料品店での買物中、男(Kelvin Harrison Jr.)から店内に流れる曲について話しかけられる。ここ、声が途切れることなく続くの凄いよね。自ら歌ってみせる。音楽に一家言あるマギーは彼との音楽談義に花を咲かせる。男が先に店を出て行き、彼がかじっていたアイスキャンディーの料金をマギーが払う羽目に。店を出ると、先ほどの男がステージに立って演奏を始めようとしていた。彼はデイヴィッド・クリフというミュージシャンだった。マギーはその歌声に聞き惚れる。

 

スター歌手のグレース・デイヴィス(Tracee Ellis Ross)の個人秘書を務めるマギー・シャーウッド(Dakota Johnson)は、長年の夢である音楽プロデューサーになる夢を実現しようとする。
自らの思いで暴走するマギー・シャーウッドをDakota Johnsonが愛らしいキャラクターに仕立て上げて魅力的。
実力と貫禄とをともに備えたシンガーであるグレース・デイヴィスをTracee Ellis Rossが演じて説得力がある。グレースは、スターとして扱われながらも現実的な視野を持ち、我を通しながらも芯に周囲の者に対する強い愛情を持った愛すべきキャラクターとして造形されている。
デイヴィッド・クリフはルックスはもとより歌声も素晴らしい。Kelvin Harrison Jr.は作品によって印象が異なるが、何を演じても観る者に強い印象を残す魅力を備えている。
マギーを諭すジャック・ロバートソン(Ice Cube)も説得力があった。
登場する人たちがいい人たちばかり。その意味ではある種のファンタジーと言える。だが、このような作品があってもいい。