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芸術鑑賞の備忘録

映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』

映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』を鑑賞しての備忘録
2021年製作のアメリカ映画。132分。
監督・脚本は、ジェームズ・ガン(James Gunn)。
撮影は、ヘンリー・バーマン(Henry Braham)。
編集は、フレッド・ラスキン(Fred Raskin)とクリスチャン・ワグナー(Christian Wagner)。
原題は、"The Suicide Squad"。

 

天井こそ無いが、四方を分厚いコンクリートの塀に囲まれた狭い空間に、オレンジ色の囚人服を着たサヴァン(Michael Rooker)が1人座っている。壁に書かれた目印に向かってゴムボールを投げると、彼の元にボールは正確に跳ね返ってくる。どこからか黄色い小鳥が舞い込み、隅で地面をつついている。サヴァンはボールを壁に向けて強く放つと、壁を跳ねたボールは小鳥に命中し、サヴァンの足下に転がる。ボールについた血を囚人服で拭う。アマンダ・ウォーラー(Viola Davis)が現れる。まだ休憩時間だろ。緊急事態なの。アマンダは10年の減刑と引き換えにサヴァンに極秘任務を遂行する特殊機動部隊に参加するよう迫る。ベルレーヴ刑務所からの一刻も早い釈放を望んむサヴァンが了承すると、頭部に遠隔操作可能な爆薬が注射される。軍務に違反すれば、即処刑となるのだ。特殊機動部隊を率いるリック・フラッグ大佐(Joel Kinnaman)に紹介されると、2人はすぐさまヘリポートへ向かう。「スーサイド・スクワッド」のメンバーとして、ブーメラン大尉(Jai Courtney)、ブラックガード(Pete Davidson)、モンガル(Mayling Ng)、ジャヴリン(Flula Borg)、T.D.K.(Nathan Fillion)、ウィーズル(Sean Gunn)の姿があった。皆が輸送機に乗り込んだところへ、ハーレイ・クイン(Margot Robbie)が慌てて飛び込んでくる。トイレで遅くなっちゃった! 離陸した機内では即席チームのメンバーがお互いの素性を探り合う。T.D.K.ってどんな意味だ? ウィーズルって狼か? アマンダの率いる司令部では部下たちが誰が生き残るかで賭けをしていた。そこへアマンダが現れ、動揺した部下たちはミーティングをしていたと言い訳をしてそそくさと持ち場へ散る。輸送機が向かうのは、南米の島国コルト・マルティース。エレーラ大統領の独裁政治が行われてきたが、シルヴィオ・ルーナ(Juan Diego Botto)とマテオ・スアレス(Joaquín Cosio)の率いる軍部がクーデターを起こし、反米政権が樹立された。海岸そばに停空飛翔する輸送機から、スーサイド・スクワッドのメンバーが次々と暗闇の海に飛び込んでいく。ウィーズルの様子がおかしい。暴れたと思ったら海中に沈んでいく。サヴァンが抱きかかえて岸まで運びこむが、ウィーズルは息をしていなかった。海岸に到達したメンバーが上陸するタイミングを計っていたところ、ブラックガードが叫びながら浜辺の奥に広がる密林へと向かって歩いて行く。彼はルーナ政権と通じていたらしい。だがブラックガードの顔面は一撃で吹き飛ばされ、密林の中に展開していたルーナ政権軍の猛攻撃が始まる。ブーメラン大尉、モンガル、T.D.K.が次々と斃れていく。サヴァンは不利を悟って退却しようと海に戻るが、ウォーラーは敵前逃亡だとして躊躇無く起爆装置を作動させ、サヴァンの頭部が吹き飛ぶ。ハーレイ・クインは瀕死のジャヴリンから槍を託されるが、その目的を言い終わらないうちにジャヴリンが事切れる。ハーレイ・クインはジャヴリンが何を伝えようとしていたが気になって仕方が無い。もやもやしているところをルーナ政権軍の手に落ちる。リック・フラッグ大佐は、密林に逃げ込んだところを反政府軍に囲まれた。
囚人のブラッド・スポート(Idris Elba)は刑務所内のトイレ、テーブル、電話器などの清掃に余念が無い。床に張り付いたガムを取り除いているところに、アマンダが部下のジョン・エコノモス(Steve Agee)、エミリア・ハーコート(Jennifer Holland)、フロー・クロウリー(Tinashe Kajese)を引き連れて現れる。彼女から特殊任務に就くように説得されるが、首を縦に振らない。面会だと告げられたブラッド・スポートが面会室に向かうと、娘のタイラ(Storm Reid)がいた。スマートウォッチを万引きして捕まっちゃった。見張りを立てなきゃ駄目だ。だいたいスマホでいいだろ、下らないものを盗んで捕まるな。娘と言い争ううちに面会を終えたブラッド・スポートにアマンダが告げる。娘さん、16よね。州法によれば「非行」では済まない可能性のある年齢じゃない? 娘を「人質」にされたブラッド・スポートはアマンダを殺害しかかるが、既の所で思い留まり、特殊任務に加わることを了承する。アマンダは、スーパーマンを撃ち抜いた狙撃能力とともに彼の人格に期待を寄せていた。ブラッド・スポートと同じく高い狙撃能力を誇るピースメーカー(John Cena)、水玉模様のポルカ=ドット・マン(David Dastmalchian)、ネズミの使い手であるラットキャッチャー2(Daniela Melchior)、人肉が好物のキングシャーク(Sylvester Stallone)によってブラッド・スポートの部隊は編成された。アマンダが任務を説明する。コルト・マルティースには、ナチスによってユートゥンハイムという研究施設が建設され、エレーラ独裁下では反体制派の粛正にも用いられていた。そこでシンカー(Peter Capaldi)によって進められている地球外生命体を用いた生物兵器研究「ヒトデ計画」に関する全てを徹底的に破壊すること。ブラッド・スポートが率いる部隊は、リック・フラッグ大佐の部隊とは別の海岸からコルト・マルティースに上陸した。

 

アマンダ・ウォーラー(Viola Davis)は、ベルレーヴ刑務所の囚人をリック・フラッグ大佐(Joel Kinnaman)とブラッド・スポート(Idris Elba)がそれぞれ率いる2つの特殊部隊に編成し、クーデターによってシルヴィオ・ルーナ(Juan Diego Botto)が反米政権を樹立した南米の島国コルト・マルティースに送り込み、ユートゥンハイムという研究施設で進められている地球外生命体を用いた生物兵器研究「ヒトデ計画」に関する一切を破壊することを計画した。

以下、全篇の内容について触れる。

「平和」のためなら誰を殺戮しようと躊躇しないというピースメーカー(John Cena)は、スーサイド・スクワッドを組織する政府高官アマンダ・ウォーラー(Viola Davis)の分身として機能している。とりわけソル・ソリア(Alice Braga)が率いる反乱軍を殲滅させたシーンは、ピースメーカーだけの行為ではないが、アマンダの放った部隊によってもたらされた結果であり、アメリカ合衆国の軍事行動に対する揶揄となっている。そして、「ヒトデ計画」自体が抱える秘密が後に明かされる中で、同じテーマが改めて描かれることになる。
「ヒトデ計画」は、一つ目のヒトデのような形状の地球外生命体を生物兵器として利用しようとするもの。巨大なヒトデ型カイジュウは、世界を飲み込む資本主義の象徴であり、「一つ目」は、金銭的価値のみでしか世界を見ることができないことのメタファーであろう。資本主義という巨大なシステム(=ヒトデ型カイジュウ)の前に、(大多数の貧しい)人々(=ネズミ)が結束して闘う姿が描かれている。
冒頭でサヴァン(Michael Rooker)がゴムボールを使って黄色い小鳥を殺す。サヴァンが遠隔装置を使って爆殺された後、黄色い小鳥が飛んできて死体をつつく。サヴァンが遊んでいたゴムボールは、自らの行いは自らに帰ってくるという因果応報を描いたものであった。
ハーレイ・クイン(Margot Robbie)様にバットで撲殺されたい願望は、本作によって、ハーレイ・クイン様に御御足で絞め殺されたい願望に変更された。
ウィーズル(Sean Gunn)が美味しいところを持って行く。