映画『寝ても覚めても』を鑑賞しての備忘録
以前から気にはなっていたものの未読の柴崎友香の小説。その柴崎作品が原作ということ以外の予備知識は無しに鑑賞。
冒頭で、牛腸茂雄の写真展。双子の子供の写真を見せる。
かつての恋人(麦)と瓜二つの外見の男性(亮平)を愛してしまう女性(朝子)の物語の予告になっていた。
そして、双子の子供の写真というと、まずはダイアン・アーバスの作品が思い浮かぶが、牛腸茂雄を選んだのだなと。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(Jurassic World: Fallen Kingdom)では、ある少女が母のクローンであるということが恐竜(の再生・開発)と並ぶ物語の柱になっていた。少女はクローン技術によって創造された恐竜たちにシンパシーを感じてある重要な決断を下す。
偶然によるものか故意によるものかは関係なく、この世に「同じ人」など生まれないということであろうか。
牛腸茂雄の写真展は、劇中で、もう1度登場する。
写真展という機会もコピーされているということか。
(見間違いでなければ)最近まで浅草橋にあったコンテンポラリーの作品を扱うギャラリーと同名のギャラリーで開催されていたが、牛腸作品は扱わないようなギャラリーなので、なぜその名前にしたのかが気になった。そして、この写真展のポスターで、2011年だということに気がづいた。
主人公・朝子の友人が出演するイプセンの『野鴨』を亮平が観劇にいく条がある。開演(おそらく15時)直前に大きな地震が起こり、公演が中止となる。会場外に落ちていた額装されたポスターを横にして立てかけていたシーンが印象に残った。
最初の恋人・麦(バク)はある時姿を消してしまい、朝子が亮平との新生活をスタートさせる場面で、再び姿を現す。伝説の貘は悪い夢を喰らうというが、災害や病気などの事実は消え去ることはない。現実と正面から向き合おうとする朝子の姿勢は痛々しくも清々しい。