可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 川内倫子個展『M/E』

展覧会『川内倫子展「M/E」』を鑑賞しての備忘録
日本橋三越本店本館6階コンテンポラリーギャラリーにて、2021年3月17日~29日。

「M/E」シリーズからの9点と、「Halo」シリーズからの10点から構成される川内倫子の写真展。「M/E」シリーズの約2分半の映像作品も併せて紹介されている。

巨大な洞穴の内部を見下ろす作品が冒頭に掲げられている。作家は、マグマが満たされていたその洞穴の底に降り立って光射す開口部を見上げたとき、あたかも胎内にいるかのように万物を生み出す母なる大地(Mother Earth)との繋がりを感じたのだという。舞い落ちる雪、飛び散る火花、滝の落水などの下降をモティーフとする作品群に、大地を突き破って噴き上げる間欠泉の上昇のモティーフの作品を併置するのは、母なる大地(Mother Earth)を舞台とした循環運動を表すのだろう。大地から吹き上がる白い間欠泉は、地平線を低い位置に縦位置の構図で収められ、画面上部8割を占める曇り空へと溶けていくようだ。明るい青色の水と白濁する波とが画面に広がる写真、くすんだ青い空を白い雲が覆う写真も、掌に載せられた三角錐状の氷の作品から連想される「溶ける」イメージによって、世界が渾然一体となっていく印象を生んでいる。太陽を背後に隠した雲を写したと思しき、ミニマリズム絵画のような作品は、微かに黄色味を帯びた光が充満している様子が、画面下部に広がる淡いグレーの影によって伝えられる。全ては生命の(エネルギー)源となる光へと収斂するのだ。新たに形成されたカルデラ湖のような池の水面がつくる楕円(2定点からの距離の和が一定となる点の集合)や、太陽が空に広げる光輪(halo)といった円(定点からの距離が等しい点の集合)のイメージは、絶え間ない運動を巨視的に捉えることで見える調和あるいは動的平衡のシンボルと見受けられる。