可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影』

展覧会『MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影』を鑑賞しての備忘録
東京都現代美術館にて、2019年11月16日~2020年2月16日。

THE COPY TRAVELERS、PUGMENT、三宅砂織、吉増剛造プロジェクト|KOMAKUS + 鈴木余位、鈴木ヒラクの5組の作家を紹介する企画。

 

加納俊輔、迫鉄平、上田良からなるユニットTHE COPY TRAVELERSの「コピササイズ」を記録した映像(展示室の入り口で上映されている)《あの日のコピササイズ》が一番印象に残る。雑誌や写真集などの印刷物や日用品などの雑多なものの中から選び出したものをコピー機に並べてコピーをとり画像(平面作品)をつくる「コピササイズ」を3人が順に行っていく。モノ自体の持つテクスチャ、並列しないはずの世界の組み合わせ、何かによって隠されることで逆に強調されるものなどが作品に現れる。「コピササイズ」は、カメラによる作品作りに近いが、原稿台(ガラス面)に置かれた(あるいは押しつけた)瞬間にしか被写体が存在しない。スキャナモーターが回転し照明ランプが移動する際に意図的にモノを動かすことで、得られる画像の刹那的性格は強められることになる。何より、作家が被写体に触れている点で、原則として対象と距離が必要なカメラによる撮影とは異なる。印刷物などの内容が克明に反映されている点でフォトグラムとも別である。印刷物や日用品などの実際のモノを扱っている点で、PC上での画像データのコラージュと違っている。対象の表面の既存の作品を組み合わせる点や、組み合わせる際の手業、さらに即興性という意味では、クラブDJのパフォーマンスに近いものがある。コピー機のスタートボタンを押すまでの間の作家の逡巡やモノの並べ替え、ガラス面に接する側が作品となるため実際の作品とは異なる原稿台の上でのルック(仕上がりの意外性)などは、「コピササイズ」の制作過程を撮影した映像作品だからこそ楽しめる要素だ。