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芸術鑑賞の備忘録

映画『キングスマン ファースト・エージェント』

映画『キングスマン ファースト・エージェント』を鑑賞しての備忘録
2021年製作のアメリカ映画。
131分。
監督・原案は、マシュー・ボーン(Matthew Vaughn)。
原作は、マーク・ミラー(Mark Millar)とデイブ・ギボンズ(Dave Gibbons)のコミック"Kingsman: The Secret Service"。
脚本は、マシュー・ボーン(Matthew Vaughn)とカール・ガイダシェク(Karl Gajdusek)。
撮影は、ベン・デイビス(Ben Davis)。
美術は、ダーレン・ギルフォード(Darren Gilford)。
衣装は、ミシェル・クラプトン(Michele Clapton)。
音楽は、マシュー・マージソン(Matthew Margeson)とドミニク・ルイス(Dominic Lewis)。
編集は、ジェイソン・バランタイン(Jason Ballantine)とロバート・ホール(Rob Hall)。
原題は、"The King's Man"。

 

1902年。南アフリカ赤十字の救援物資を運ぶ馬車の列。その先頭には、オーランド・オックスフォード公爵(Ralph Fiennes)の姿がある。イギリス軍の設置した強制収容所を見渡せる場所に到達すると、執事のショーラ(Djimon Hounsou)が馬車を停止させ、公爵に双眼鏡を手渡す。イギリス軍兵士が遺体を墓穴に投棄する様子や、栄養状態の悪いアフリカーナーたちの姿が目に入った。収容所の前へと隊列を進めた公爵は、哨兵にキッチナー将軍(Charles Dance)に面会を申し出るが、不在だと門前払いを喰らう。それに気が付いたモートン大尉(Matthew Goode)が慌てて招き入れた。長年の友人であるキッチナー将軍に面会したオーランドは、アフリカーナーに対する待遇の改善を求める。馬車で待っていたオーランドの妻エミリー(Alexandra Maria Lara)は、幼い息子コンラッド(Alexander Shaw)に「円卓の騎士」を題材にノブレス・オブリージュを果たすよう言い聞かせると、夫の交渉が終わる前から収容所の入口で物資の受け入れを訴えた。ようやく搬入が開始されたところ、突然銃撃が始まった。息子のいる馬車に慌てて戻ろうとしたエミリーは、将軍を狙うスナイパー(Bevan Viljoen)の標的に入ってしまい腹部を撃ち抜かれてしまう。左脚に被弾したオーランドが死なないでくれと懇願するが、エミリーはコンラッドを夫に託して絶命する。馬車に隠れていたコンラッドが母のもとに駆け寄る。オーランドは妻の体にジャケットを被せ、息子を抱き締める。
1914年。オックスフォード公とコンラッド(Harris Dickinson)が飛行機に乗って屋敷に帰還する。コンラッドは、飛行機に乗るよう勧めたショーラが人間に翼は無いと断ると、ショーラが自動車を運転することを引き合いに、人間に車輪は無いとやり込める。居並ぶ召使いたちがお辞儀をして杖をついて歩む公爵を迎え入れる中、ポリー・ウィルキンス(Gemma Arterton)だけは敬意を示そうとしない。公爵は彼女に10分後に書斎に来るよう伝えると、ポリーはようやくお辞儀をした。ポリーはコンラッドの養育係であり、公爵に対して不満をぶつけるのに容赦無い。コンラッドの従兄弟に当たるフェリックス・ユスポフ(Aaron Vodovoz)を招く一方で、コンラッドにフェリックス訪問を許さないなど、公爵がコンラッドに過保護であることを難じる。公爵は自らにも養育係が必要かもしれないと愚痴る他ない。ポリーはベランダへ出ると、コンラッドに対して模造のダガーを用いて格闘訓練を行なっているショーラに向かい拳銃を発砲して、もはや白兵戦の時代ではないと言い放つ。公爵はコンラッドを連れてサヴィル・ロウの最高級の紳士服店キングスマン」に向かう。試着室でスーツに身を包んだコンラッドを目にしたオーランドは、エミリーも喜んでいるだろうと目を細める。試着室を出たところで、2人はキッチナー将軍と鉢合わせする。キッチナー将軍は公爵にオーストリア=ハンガリー帝国皇位継承者であるフランツ・フェルディナント大公(Ron Cook)の護衛を依頼するために来店していた。父が将軍と面会している間、コンラッドモートン大尉に陸軍近衛師団に志願したいと訴える。未成年のコンラッドの入隊は叶えられなかったものの、公爵に同行してサラエヴォに向かうことになった。
グリゴリー・ラスプーチン(Rhys Ifans)、マタ・ハリ(Valerie Pachner)、エリック・ヤン・ハヌッセン(Daniel Brühl)らが参加している秘密結社の会合で、ガヴリロ・プリンツィプ(Joel Basman)はフェルディナント大公を暗殺する任務を引き受けた。サラエヴォに潜伏したガヴリロは、大公と大公妃ゾフィー(Barbara Drennan)の乗る車に向かって爆弾を投げつけたが、同乗していたコンラッドがステッキで弾いたために、爆弾は後続車両に逸れて爆発、大公夫妻は難を逃れた。ところが、いったん市庁舎に避難した後、脇道を移動していた大公夫妻の車が進路を誤った。方向転換しようとしていた車の傍に偶然居合わせた逃走中のガヴリロがピストルを発射し、大公夫妻は凶弾に斃れてしまう。

 

オーランド・オックスフォード公爵(Ralph Fiennes)は敵兵を殺戮した経験から軍服を脱いだ。第二次ボーア戦争終結直後の1902年、赤十字の活動に従事した際、反英ゲリラの襲撃を受けた公爵は、自ら左脚に被弾したのみならず、キッチナー将軍(Charles Dance)を狙った銃弾によって妻エミリー(Alexandra Maria Lara)を失ってしまう。妻から幼い息子コンラッド(Alexander Shaw)の養育を託された公爵は、息子を危険な目に遭わせまいと平和主義を徹底して隠棲する。1914年、キッチナー将軍から非公式の協力依頼を受けた公爵は、勢力均衡による平和を維持すべく、成長したコンラッド(Harris Dickinson)を伴い、オーストリア=ハンガリー帝国のフランツ・フェルディナント大公(Ron Cook)護衛のためサラエヴォに向かう。だが大公夫妻はガヴリロ・プリンツィプ(Joel Basman)の兇弾に斃れた。イギリス王ジョージ5世(Tom Hollander)の説得にも拘わらず、ロシア皇帝ニコライ2世(Tom Hollander)やドイツ皇帝ヴィルヘルム2世(Tom Hollander)は、オーストリアが報復のためセルビアに仕掛けた戦争に相次いで加担していく。

第一次世界大戦の背後で暗躍する国際的秘密結社「シェパーズ・フロック」と、それに立ち向かうオーランド・オックスフォード公爵らの活躍とを描き、『キングスマン(Kingsman: The Secret Service)』(2014)や『キングスマン:ゴールデン・サークル(Kingsman: The Golden Circle)』(2017)に登場する諜報機関キングスマン」の誕生を解き明かすアクション映画。もっとも、前2作を未見でも問題なく鑑賞可能である。第一次世界大戦に関するごく基礎的な知識があると展開を追いやすいだろう。
第一次世界大戦「秘史」を纏っているものの、第1作(2014)を髣髴とさせる展開も。
ポリー・ウィルキンス(Gemma Arterton)が頼りになる。
"Manners maketh man."を最初に言ったのは…。