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芸術鑑賞の備忘録

映画『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』

映画『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』を鑑賞しての備忘録
2023年製作のフランス映画。
116分。
監督は、マイウェン(Maïwenn)。
脚本は、マイウェン(Maïwenn)、テディ・ルシ=モデステ(Teddy Lussi-Modeste)、ニコラ・リベッチ(Nicolas Livecchi)。
撮影は、ローラン・ダイアン(Laurent Dailland)。
美術は、アンジェロ・ザンパルッティ(Angelo Zamparutti)。
衣装は、ユルゲン・ドーリング。
編集は、ロール・ガルデット(Laure Gardette)。
音楽は、スティーブン・ウォーベック(Stephen Warbeck)。
原題は、"Jeanne du Barry"。

 

草原の木陰でデュムソー(Robin Renucci)がイーゼルを立て、近くに坐らせた幼いジャンヌ(Emma Kaboré Dufour)の肖像をスケッチしている。
ジャンヌ・ヴォーベルニエは修道士と料理人との間に出来た私生児でした。卑しい出自であるがゆえに、名も無き庶民として一生を過すことを運命付けられていました。這い上がる他に道はありません。
デュムソーは晩餐の席にジャンヌを立ち会わせ、暇があれば本を読み聞かせてやる。
母親アンは女手一つでジャンヌを育てました。アンヌを雇ったのは思いやりのある優しい人物であるデュムソーで、彼はジャンヌを預かり、知識欲を満たしてやりました。彼はサロンに招き入れて立ち居振る舞いを洗練させたのです。
デュムソーはアンヌ(Erika Sainte)とともにジャンヌを修道院に連れて行く。格子の嵌まった窓から少女たちが馬車でやって来たジャンヌたちを眺めている。薄暗い建物でジャンヌは修道女達に迎え入れられる。
デュムソーの用立てでジャンヌはサントール修道院に入会しました。下層階級の娘がしばしば陥る淫蕩からジャンヌを守ろうとしたのです。
池畔でジャンヌ(Loli Bahia)が1人本を読んでいる。修道女たちがやって来てジャンヌを罵る。修道院を追放されたジャンヌをデュムソーとアンヌが迎えに来る。
ジャンヌは成長し、修道院生活は耐え難いものになっていました。書物は彼女の視野を広げるとともに、エロティシズムによって心を掻き乱されていました。
デュムソーは幼い頃と同じように再びジャンヌとともに本を読む。デュムソー夫人は夫がジャンヌと二人きりでいるのを見咎める。
修道院を出たジャンヌはもう大人です。ジャンヌの魅力に抗えないと心配したデュムソー夫人は盗みを捏ち上げてジャンヌとアンヌを追い払ってしまいました。2人は希望と危険とに満ちたパリへ向かいました。
画塾でジャンヌがデッサンのモデルとなり椅子に坐っている。アンヌが娘を衝立の裏に連れて行き、服を脱ぐように促す。いつも脱いでるでしょ。私の身体でしょ。画家が散歩に出るといいと言ってアンヌにモデル料を握らせ、退出させる。ジャンヌは服を着たままモデルを続ける。
ジャンヌは未亡人ラガルド夫人(Caroline Chaniolleau)の読書係となる。夫人のサロンにも顔を出すうち、彼女の息子たち(Gabriel Arbessier、Guilhem Arbessier)とも親密になる。息子たちと関係を持ったことを知られたジャンヌはラガルド夫人に追放されてしまう。
放蕩により、ジャンヌはどうすれば女として自由なままでいられるかを理解しました。
月日が経ち、裕福な愛人たちを誘惑するために自らの魅力を存分に活かす手練を身に付けました。高級娼婦として知られるようになりました。

 

ジャンヌ・ヴォーベルニエ(Emma Kaboré Dufour)は、アンヌ(Erika Sainte)と修道士との間に生まれた不義の子。アンヌの雇い主デュムソー(Robin Renucci)に可愛がれて淑女としての教養や立ち居振る舞いを身に付け、一時は修道院にも入った。成長したジャンヌ(Loli Bahia)が修道院生活に耐えられなくなり、再びデュムソーの庇護を受けるが、夫との関係を案じた夫人から母とともに逐われてしまう。パリに出て絵画モデルをしたり貴人の読書係を務めたりした後、ジャンヌ(Maïwenn)は高級娼婦として名を馳せるようになる。バリー伯爵(Melvil Poupaud)に囲われたジャンヌは、リシュリュー公爵(Pierre Richard)の薦めもあり、国王ルイ15世(Johnny Depp)に献じられることになった。

(以下では、冒頭以外の内容についても言及する。)

フランス国王ルイ15世の晩年の公妾ジャンヌを描く。国王の寵愛を受け、侍従ラボルド(Benjamin Lavernhe)の世話を受けながら、国王の娘たち(Suzanne De Baecque、Capucine Valmary、Laura Le Velly)や、王太子ルイ(Diego Le Fur)、彼に嫁いだマリー=アントワネット(Pauline Pollmann)との関係に焦点が当てられる。
王の寝室に入るために事前の検査、王の前では後ろ姿を見せてはならないとの仕来り。とりわけマジックミラーや望遠鏡により王の単調な生活を覗かせてもらう場面により、宮中に入り込んだジャンヌとともに、ルイ15世の宮廷生活を鑑賞者も垣間見せてもらうという結構。
国王は単調な生活に倦んでおり、慣習に囚われないジャンヌが新風を吹き込んだことが寵愛を受けた要因として示される。同時に、ジャンヌは伝統を重んじる者たちからの反感を受けることにもなる。
ポンパドゥール夫人を介した外交革命(その結果、ハプスブルク家からマリー=アントワネットが王太子ルイに嫁ぐことになる)や七年戦争よりも後の時代であるが、宮中生活を描くことに徹しているため、ルイ15世の統治については触れられない。
ジャンヌ・デュ・バリーについては全く知識無く鑑賞したが、ジャンヌとフランス革命との関わり、とりわけ、ジャンヌが愛情を注いでいたザモール(Ibrahim Yaffa、Djibril Djimo)の行動には衝撃を受けた。
国王の侍従でジャンヌの世話係でもある温厚篤実なラボルドを演じたBenjamin Lavernheが魅力的。
全篇フランス語で、Johnny Deppもフランス語で演じているのが新鮮。