可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『マイ・プレシャス・リスト』

映画『マイ・プレシャス・リスト』を鑑賞しての備忘録。

キャリーは、極めて高い知能の持ち主。14歳でロンドンから単身アメリカに渡り、飛び級して18歳でハーバード大学を卒業した。しかし、渡米のきっかけには母の死があった。早くに実家を離れたことで父とも疎遠である。孤独感から大学の文学担当の教授と親密な関係となるが、破綻する。
卒業から1年経つ現在、キャリーは、マンハッタンで半ば引きこもった生活を送っている。サンクスギビングデーに訪ねてくる予定だった父が予定を突然キャンセルしたため、キャリーは父の知り合いである精神科医ペトロフのもとに七面鳥を持って現れる。言い訳や否定的な言葉ばかりを口にするキャリーに対し、ペトロフは、次の面会までに、年内に実現すべきことをリストアップするよう提案する。しかし、キャリーはリストを作成して来ない。そこで、ペトロフは、「ペットを飼う」、「子供の頃好きだったことをする」、「デートに出かける」、「友達をつくる」、「一番お気に入りの本を読む」、「大晦日を誰かと過ごす」という課題を与えることにする。

本作品において本は重要な役割を担っている。
誰とも会わずに過ごすキャリーはペトロフに読書で忙しかったと告げる。1週間で何冊読んだのかと問われて、17冊との回答。キャリーのオススメはフーコーの『知の考古学』(!)だが、一番お気に入りは、サリンジャーの『フラニーとゾーイ』。かつて母親からその初版本を贈られていたからだ。そして、この本こそが文学教授との関係を生み出し、その行方がキャリーの運命に大きく関わることになる。
その他にも、本はキャリーと分かちがたく画面に登場する。極めつけは本でつくられたクリスマスツリーだろう。

父親の口利きで始める法律事務所の校正係の職。他人と関わり合いにならなくてすむので始めたが、そこで二人の同僚との関係を築いていく。特異なキャラクターの男性の同僚は、キャリーとの相同性を感じさせる存在。

自分をよく見せること。親しくなってから素を曝す。

嘘ばかりつく人物との同居。

セックスに対するオブセッション

倫理や道徳に対してどう向き合うべきか。

複雑さ。大人になること。

音楽がとりもつ縁。

マンハッタンを舞台にした映画であり、マンハッタン映画とでもいうべきご当地ムービー的側面あり。夜景を中心に、空撮を含め、様々な姿が映し出される。
恋する二人がえんえんと語りながら街を歩く姿は、定番だけれどもやはり惹かれる。