可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『エンジェル、見えない恋人』

映画『エンジェル、見えない恋人』を鑑賞しての備忘録。

 

姿の見えない男の子と目の見えない女の子の物語.。


ルイーズは、交際相手の奇術師が姿を消したことで心を病み、精神病院で暮らすことを余儀なくされる。密かに出産した男の子はルイーズにしか姿が見えない。
ルイーズから「私のエンジェル」と呼ばれ、病室の中で成長した男の子は、あるときから病室の向かいに住む女の子が気になっていた。ルイーズの病気が進行する中、少年は病院を抜け出し、女の子のもとへ向かうことにする。
屋敷の裏庭でブランコをこぐ少女をうかがう少年のことは母親しか認識できないはず。ところが、マドレーヌと名乗る盲目の少女は少年に気がつき、やさしく声をかけてくる。動転した少年は、あわてて立ち去るが、孤独な二人にとってかけがえのない日々が始まる。
ところが、ある日、マドレーヌが眼の手術を受けるために屋敷を離れることになる。マドレーヌからの手紙に返信することのできない少年のもとに、数ヶ月で戻るはずのマドレーヌは戻ってこない。そして、少年の母ルイーズは衰弱して亡くなってしまう。


盲目の少女と姿の見えない少年という組み合わせが、かけがえのない二人の関係をつくり上げている。目の見えないことも、姿の見えないことも、いろいろな問題を引き起こすけれど、二人一緒なら何も問題は生じない。そして、少年は姿が見えないということは、少女は知らないというところがこの作品の重要なポイントで、盲目の少女が視力を得たとき、姿の見えない少年の存在はどうなってしまうのか、というスリリングな展開となる。


病院のシーンなどをのぞけば、ほとんどマドレーヌしか映らない。少年の目線としての映像であるか、客観的な映像でも少年の姿は見えないために、マドレーヌの美しい姿だけが映像に現れるからだ。これ以上に「男目線」の映像もないかもしれない。同時に、マドレーヌしか目に入らないかのような、愛情の深さの表現ともなっている。

「透明人間」を描く映像は少しコミカルで、木々の緑をはじめとする自然とマドレーヌの美しさと相俟って、ファンタジーの世界に没入させてくれた。