可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 牧田恵実個展『第一回白鯨会展』

展覧会 『牧田恵実個展 第一回白鯨会展』を鑑賞しての備忘録

Art Lab TOKYOにて2018年10月29日~11月10日。

男性の皮膚の表面に浮き出た血管に魅力を感じ、屹立するバオバブの姿などを描いてきた牧田恵実の絵画展。

白馬会ではない。明るさや軽みとは対極の「デロリ」の美を追究する牧田が起ち上げたのは会員一名の「白鯨会」。メルヴィルの『白鯨』は、エイハブ船長の巨大鯨に対する復讐劇だが、白鯨には「MOBY-DICK」なる名が付されている。牧田の銛先ならぬ筆先にも巨大なDICKが捉えられている。

「一見して過激で自慰のように見えてしまいがちな表現だが、その自慰は独りぼっちな少数派の誰かの心の浄化になり得るのではないか・・・・ きっと、年代限らずそういった孤独を抱えた者達は代弁してくれる表現を求めている。 私がその者達だったように・・・」

まっすぐに伸びて枝を広げる樹木を中央に、それを囲むように岩が屹立する島の絵がある。枝先からは精子のようなものが飛び出し、空を泳いでいく。
英語で「島」を意味するislandと「孤独」を意味するisolatetionは語源を同じくする。水面に浮かぶ島は作者自身の姿だ。そして、どこかに漂うだろう他の孤独な者たちへ向けて作品が制作され、発表されていく。