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芸術鑑賞の備忘録

黒田記念館特別室公開

黒田記念館特別室を訪問しての備忘録

黒田記念館にて、2018年10月30日~11月11日。

 

黒田記念館の2階には特別室があり、黒田清輝の《智・感・情》、《舞妓》、《湖畔》《読書》が展示保管されている。一般公開は年3回2週間ずつ行われている。


黒田清輝《智・感・情》について。
1897年の第2回白馬会展に出品。加筆の後、1900年の第5回パリ万国博覧会にも出品された。

日本人女性をモデルにしたヌードの三幅対。背景は金地のみ。右から、額に右手を、腹に左手を置きやや右方向を向いた「智」、両腕を顔の位置まで持ち上げ、正面を向く「感」、右手で髪を触り左手は下腹部に置かれ伏し目がちに表された「情」。

第4回内国勧業博覧会(1895年)で騒ぎを起こした《朝妝》には鏡に向かって髪をまとめる裸の女性の後ろ姿が、第6回白馬会展(1901年)で「腰巻事件」が起こった《裸体婦人像》には裸で横座りする女性が描かれている。両作品とも室内のヌードで、足下には触覚をイメージさせる毛皮が敷かれている。「サロンの風俗画の慣例に従って、生身の、どちらかといえば官能的な女性モデルの姿を描く作品」(蔵屋美香黒田清輝とはだか」『ぬぐ絵画 日本のヌード 1880-1945』p.62-63)であった。
それに対し、《智・感・情》では、「『頭頂から顎の先までの長さ』三つ分のところにへそが、四つ分のところに脚の付け根が、それぞれ正確に配され、また両乳首とへそを結ぶと正三角形が現れる」など、「あらゆる方法を総動員して、何とか『普通の肉体ではない』はだかを成立させようとした」「理念を著わす作品(当時一般に「理想画」と呼ばれた)に本格的に取り組んだ」(蔵屋・同p.66-70)作品である。

理想化された肉体の魅力に加え、命題を与えるかのようなタイトルや腕の構え方の謎につい見入ってしまうが、はじき返されてしまうような作品。