可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 菅原玄奨・高橋直宏『The Metamorphosis』

展覧会『菅原玄奨・高橋直宏 二人展「The Metamorphosis」』を鑑賞しての備忘録
EUKARYOTEにて、2019年1月11日~2月3日。

菅原玄奨と高橋直宏の2人の彫刻家を紹介する企画。

 

高橋直宏は木彫作品を中心に展示。荒々しく刻まれ切断された木が訴えかける暴力的な力強さと、穴を開けることで強調される空間感覚が持ち味の作品群。《斜陽》(2018)や《嵐》(2019)はサイズこそ小さいものの、眼のように開けられた穴が不穏な雰囲気を周囲に生み出すとともに、観る者の視線を誘う。大作の《箱庭で遊ぶ》(2019)は人体を象ったものであるが、頭部や胴部は厚い板の組み合わせ。胴部には文字通り腕らしきものが取って付けられている外、直交する2枚の板が、捻れたように接続される脚と呼応して、回転運動を表現して、空間感覚に時間感覚をも組み入れている。脚に黒い線で描かれた足と指がチャーミングな印象を添える。

 

菅原玄奨の《stranger(portrait) vol.1》(2019)、《stranger(portrait) vol.2》(2019)は、いずれもマット・グレーで塗装された女性の頭像。顔面に貼り付けられた複数の直方体はデジタル・データによる図像をイメージさせ、匿名で行われるネット上のやり取りや、プライヴァシーの秘匿の要請とSNSによる私生活の公開との鬩ぎ合いを想起させる。3Dプリンタ時代の肖像彫刻の揶揄と回することもできよう。