可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 藤井健仁個展『アブジェクションX』

展覧会『New Personification vol.6 藤井健仁 アブジェクションX』を鑑賞しての備忘録
日本橋髙島屋美術画廊Xにて、2019年12月18日~2020年1月6日。

「転校生」、「海から離れて」、「2Hours Object」の各シリーズで構成される、藤井健仁の彫刻作品展。

《転校生/突風》は、セーラー服をまとう少女が髪の毛とスカートとを強い風になびかせている様を鉄で表した作品。髪の部分だけ見れば、鉄を切り出した無骨な造形である。だが、手足の伸びやかさなど身体のプロポーションと少女のとるしなやかな姿勢との全体から受ける印象は、極めて軽やかである。そして、その軽やかさを裏切るインパクトを生むのが顔の造形だ。除雪用のスコップを連想させる仮面のような顔面に目と口とが穿たれている。安産や多産への祈りとも考えられている、女性の出産に関わる身体をデフォルメした土偶との対比で、出産とは切り離されたセックスのイメージを象った像と言えそうだ。保護対象として生殖行為から切り離された少女の身体に、仮面という護符を打ち付け、視野を狭窄させるとともに口を開かなくさせ、欲望を封印している。だが、禁忌を訓育する拘束衣であるはずのユニフォームは、かえって欲望を誘引し、禁圧に反して性的イメージへを高めてしまうのだ。