可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『南桂子展 コト、コト。コトリ。』

展覧会『南桂子展 コト、コト。コトリ。』を鑑賞しての備忘録
ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションにて、2019年2月2日~4月11日。

南桂子の版画作品52点と関連資料を紹介する企画。浜口陽三の版画作品13点なども合わせて紹介されている。

少女、鳥、魚、樹木や塔などが描かれた作品群。少女は丸顔の、やや愁いを帯びたませた雰囲気の独自のスタイルを持つ。空を飛ぶ鳥と海を泳ぐ魚とは作者のつくる世界の中では共生し、並列されている。樹木や塔のような突き出す形を好みだったようで、とりわけ三角形には関心があるらしく、網を描きこんだ作品では、伝統工芸に見られる網干模様のような三角形も見られる。
一番印象に残ったのは《少女と風せん》。画面左手の木には鳥の巣があり、赤いメスが卵を抱いている。近くの枝では青いオスが、メスを見守っている。木の右手には鳥の巣を眺める少女が、風船を手に立っている。少女の風船を持つ手は、お腹の位置に置かれている。少女は抱卵する鳥の姿に、自分が子どもを持つ日を想像しているのだろう。風船は、子を孕んで脹らむお腹(子宮)の象徴だ。そこには少女の夢も重ね合わされているだろう。一方、少女の足下に拡がる影は、少女の不安を表している。不安を抱えながら、少女は未来を見据えている。