可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『ハイ・ライフ』

映画『ハイ・ライフ』を鑑賞しての備忘録
2018年のドイツ・フランス・イギリス・ポーランドアメリカ合作映画。
監督は、クレール・ドニ(Claire Denis)。
脚本は、クレール・ドニ(Claire Denis)、ジャン=ポル・ファルゴー(Jean-Pol Fargeau)。
原題は、"High Life"。

モンテ(Robert Pattinson)は、宇宙船の補修のため、船外活動を行っている。船内の司令室では、赤ん坊がベビーベッドから、モニターに映し出される古い映画を見つめている。モンテは赤ん坊の様子を音声で確認しながら作業しているが、赤ん坊の泣き声に気をとられて、スパナを失ってしまう。宇宙船にはモンテと赤ん坊しか搭乗しておらず、燃料や食料などは十分に残されていない。燃料を少しでも節約するため、船内に低温で安置していた遺体を船外に投棄する。モンテは、司令室に向かい、音声で航海日誌をつける。この作業を行わないと、システムの稼働が継続されないのだ。
モンテの搭乗する宇宙船「7」号は、物理学者ロジャー・ペンローズの理論に基づき、地球から最短距離にあるブラックホールからエネルギーを採取する任務を負っている。船長チャンドラ(Lars Eidinger)の下、医師のディブス(Juliette Binoche)、乗組員としてモンテの他に、チャーニー(André Benjamin)、エットゥーレ(Ewan Mitchell)、ボイジー(Mia Goth)、ナンセン(Agata Buzek)、ミンク(Claire Tran)、エレクトラ(Gloria Obianyo)が乗船していた。彼らはもとは死刑囚や終身刑の服役囚で、帰還の保証がないプロジェクトに捨て身で志願した者たちだった。
医師のディブスは、宇宙空間における生殖についての実験に熱中していた。男性乗組員に薬品を供与することを通じて自発的に精液を提供させる体制を整えていた。そして、女性乗組員に採取した精液を受精させる実験を実施するのであった。

 

近年のCGでゴリゴリと作り込んだ作品に比べ手作り感のある宇宙船の描写は、地球から送信されてくる脈絡のない映像(古い映画)と相俟って、独特の味わいを持つ。次第にこの映画の世界観に馴染んでくる。

ペンローズ理論に基づくブラックホールからのエネルギー採取という目標は、いったいどのように実現されうるのか。映画を見ている私同様、宇宙船「7」の乗組員も理解できていないのではないか(とりわけ、小型艇による探査が象徴的だ)。だが、この目的の不明さこそ、この映画の重要なテーマであろう。何のために生きるのか、なぜ生きるのかという問題をSFサスペンスを通じて問いかけている。

モンテにフラッシュ・バックする過去と、彼の宇宙船での生き方。犯罪者とその更正。

魔女というテーマも明確に扱われている(ディブス自らに「魔女」と言わせている)。Mia Gothは『サスペリア』にも出演していた。

犬が意味するものは何だろうか。

父から息子へというパターンから、父から娘というパターンが増えている。