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芸術鑑賞の備忘録

映画『さらば愛しきアウトロー』

映画『さらば愛しきアウトロー』を鑑賞しての備忘録
2018年のアメリカ映画。
監督・脚本は、デビッド・ロウリー(David Lowery)。
原作は、デビッド・グラン(David Grann)。
原題は、"The Old Man & the Gun"。

1981年のアメリカ。74歳になるフォレスト・タッカー(Robert Redford)は銀行から金を奪って車で逃走中、故障して立ち往生するトラックを見かける。警察は逃走車両が現場から遠くない場所に停車するはずがないと考えると判断し、タッカーは、車を停め、ボンネットを開けて途方に暮れる女性(Sissy Spacek)に声をかける。案の定、警察車両はその脇を通り抜けていく。タッカーの仕種を見て車に詳しくなさそうだと楽しげに口にする女性。タッカーはその女性を車で送ることにする。女性はジュエルと名乗る。名前負けしてないかとか、車は盗んだものだとか、次々に洒落の利いた発言を繰り出すジュエルに、タッカーは魅了される。意気投合した二人はダイナーに立ち寄って、軽食をとることにする。そこで職業を問われたタッカーはいったんはセールスマンだと説明する。聖書でも売って歩いているのかと言うジュエルに、タッカーは実は銀行強盗をしていると告げ、銀行の状況をよく観察してチャンスをいつまでも待つのだとダイナーの構造を例に説明する。だが、ジュエルは冗談だと取り合わない。タッカーも笑い話で済ませてしまう。だが、実際、タッカーは少年時代から数々の犯罪を犯し、刑務所の出入りを繰り返してきた筋金入りの泥棒だった。最近はテディ(Danny Glover)とウォラー(Tom Waits)と組み、銃を仄めかして金を出させる手口を各地の銀行で繰り返していた。タッカー一味が関与したある銀行強盗を担当した刑事のジョン・ハント(Casey Affleck)は丁寧な聞き込みを行うとともに類似の犯行の記事を徹底して集め、犯人の人相書きを作成して事件を追っていた。テレビのニュース番組にインタヴューされたハントは、自分の手で逮捕するとのメッセージをタッカーに送る。タッカーはそのニュースを偶然目にしたのだった。

 

決して銃を撃つことのない紳士的な強盗を貫くタッカーの流儀と、1980年代のアメリカの風景を現出させた映像とが、牧歌的な世界を生んでいた。そして、タッカーとジュエルとの軽妙なやり取りと適度な距離の保ち方が、その世界によく調和していた。もっとも、それがゆえに、タッカーの過去の犯罪の紹介や、ハント刑事の家庭のエピソードなどは蛇足に見えた。文章による説明の入れ方も不格好にすぎる。もっとタッカーとジュエルの世界に絞り込んで欲しかった。