可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『TOKAS-Emerging 2019 第1期』

展覧会『TOKAS-Emerging 2019 第1期』を鑑賞しての備忘録
トーキョーアーツアンドスペース本郷にて、2019年7月20日~8月18日。

公募で選出した、谷崎桃子、砂田百合香、小田原のどかの作品をそれぞれ個展形式で紹介。

 

谷崎桃子『lonely girl もう時間』について。
7点の絵画と1点の立体作品に加え、《第三者としてのオブジェクト》と題された4点の立体作品を展示。
《2010.5.29 I believe》を除き、モノクロームを中心に部分的に色彩が加えられた、落ち着いた雰囲気の作品群。布(ヒョウ柄)、眼鏡(レンズ)とシガレット(立ち上る煙)が、複数の作品で用いられるモチーフ。
ヒョウ柄の布はカムフラージュのように画面に溶け込む。否、ヒョウ柄の世界に人やモノが取り込まれているのだろう。布、柄、毛皮。ヒョウは縁語のように「表(ヒョウ)」面をたぐり寄せる。タブロー(=絵画)は「表」である。ディスプレイという表面に覆われた世界の表象としての絵画。
描かれた眼鏡のレンズには、人物や風景が映り込む。2枚のレンズには異なる光景が表され、眼鏡が置かれた状況からはずれたイメージが描き込まれている。レンズが映し出す二重のズレ。眼前の出来事をディスプレイ越しに見やる現実の象徴か、あるいは、「色眼鏡」(=主観)による世界把握の表象か、はたまた複眼的思考の謂か。
《第三者としてのオブジェクト》にはコンクリートやガラス、あるいは魚も含む。とりわけ花や灰皿の存在は、絵画にも描かれているため、絵画の平面性や虚像としての性格を際立たせることになる。紫煙は絵画の儚さを虚ろさの象徴とも言える。だが、煙の存在を定着させる絵画の力も同時に誇示する。その反転可能性は、《After falling love》の倒立した女性像にも表されている。