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芸術鑑賞の備忘録

映画『永遠に僕のもの』

映画『永遠に僕のもの』を鑑賞しての備忘録
2018年のアルゼンチン・スペイン合作映画。
監督は、ルイス・オルテガ(Luis Ortega)。
脚本は、ルイス・オルテガ(Luis Ortega)、ルドルフォ・パラシオス(Rodolfo Palacios)、セルヒオ・オルギン(Sergio Olguín)。
原題は、"El Ángel"。

1971年のブエノスアイレス。カルリートス(Lorenzo Ferro)が帰宅途中、豪邸の前を通りかかる。塀を跳び越え、呼び鈴に反応がないことを確認すると、鍵の掛かっていない窓から侵入する。広く洗練された室内でまずはグラスに飲み物を注ぎ一息つくと、部屋を見て回り、引き出しから宝石を取り出す。リヴィングのレコードプレーヤーにレコードをかけ、一頻り曲に合わせて踊ると、気に入ったレコードを手にガレージに向かう。高級車の1台に乗りかけるが、外にバイクがあるのを目にすると、それにまたがり、家に向かう。母オーロラ(Cecilia Roth)がバイクで帰宅した息子を見咎めると、友人から借りたという。母は今後は借りないよう言い含める。生返事のカルリートスは、ミラノ風のカツレツが用意されているのを知って好物だと喜ぶ。夕食後、ピアノを弾くカルリートスに父エクトル(Luis Gnecco)は工業高校への転校を機に学業に打ち込むよう諭す。工業高校の実習に参加したカルリートスは雄々しく眉目秀麗なラモン(Chino Darín)を目にして一瞬で惹かれる。課題に取り組むラモンに声をかけたものの反応が薄かったため、ガスバーナーを後頭部に近づける。焦げ臭い臭いに気が付いたラモンはカルリートスに殴りかかる。実習中の喧嘩で校長に呼び出された二人だったが、待機場所からカルリートスはさっさと立ち去ってしまう。だがラモンが面談を終えて校舎を出ると、カルリートスは彼を待っていた。カルリートスは盗品を気前よくラモンに配るなどして、二人はつるむようになる。カルリートスは前に通っていた高校の恋人の家に顔を出す。出迎えたマグダレーナ(Sofía Inés Torner)に僕と付き合っている方の子かどうか確認すると、違うと言われる。奥から双子のマリソル(Malena Villa)が姿を表わす。転校して顔を見せることができず心配をかけたと、カルリートスは母から渡すよう言われたと、先日盗んだネックレスをマリソルに渡す。ラモンはカルリートスの盗みの才能を見込んで、家に招待する。ラモンの母アナマリア(Mercedes Morán)は美貌のカルリートスを歓迎し、父ホセ(Daniel Fanego)は地下室でピストルを一発試し打ちさせる。もっと撃ってみたいというカルリートスに、ホセは銃弾は高いと拒絶する。すると、カルリートスは高いなら盗めば良いと提案する。泥棒家業のホセは、カルリートスを仲間に加え、警備の手薄な銃販売店侵入を計画する。

 

「黒い天使(El ángel negro)」や「死の天使(El ángel de la muerte)」と呼ばれた実在の犯罪者に触発されて制作されたフィクション。
反射運動のように口から出任せを言い、銃を放って殺してしまう天真爛漫な犯罪者カルリートスを洗練された映像と音楽とで描く。主人公の衝動任せの無軌道さが流れるように映し出されていくが、そこにカタルシスは感じさせない。バランスがとれない危うさを保つというアクロバティックな進行を強引に可能にしてしまうのが、主演のLorenzo Ferroが放つ魅力だ。