展覧会『大原舞「HAZY HUE」』を鑑賞しての備忘録
Gallery OUT of PLACE TOKIOにて、2019年9月13日~10月13日。
女性の身体を象ったソフト・スカルプチャーが展示されている。折り曲げた身体を晒すもの、タトゥ―のような模様が描き込まれたもの、衣装をまとった人形に近いものなど、形も大きさも様々なものが並ぶ。
身体と衣装とは図と地の関係にあるとしても、その関係性は容易に反転する。あるいは、タトゥーという身体に直接施される装飾が、図と地との関係を曖昧なものにする。
作者は壺を模したソフト・スカルプチャーも会場内に並べているが、花を活けたものと、器面に植物を描き込んだものとがある。これらの作品でも花と壺という図と地の関係性の反転可能性や曖昧さが看取可能だ。
絵画作品においても、壺と植物とを主題としながら、多層的な背景を置き、さらには額縁にまで筆を入れているが、これも図と地を往還し、あるいは図と地との関係性を解体するものだろう。
作家のステートメントには「とても曖昧でとても愛おしい場所 家と家との間にぽっかりとあらわれる」とある。先行きの不透明性がもたらす不安から、確実なもの、明瞭に切り分けられたものにすがる力が強く働く社会において、法のような社会システムが設定するハードな境界=断絶を無効化するかのような現象の中に汲み取るべき力を見出しているのではないか。境界を往還し、あるいは解体する柔らかな想像力を。