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芸術鑑賞の備忘録

映画『サラブレッド』

映画『サラブレッド』を鑑賞しての備忘録
2017年のアメリカ映画。
監督・脚本は、コリー・フィンリー。
原題は、"Thoroughbreds"。

アマンダ(Olivia Cooke)は、幼馴染みだが疎遠となっていたリリー(Anya Taylor-Joy)の屋敷を訪れる。リリーはメイドが声をかけてもなかなか姿を見せない。その間、アマンダは部屋を見て回る。乗馬する幼いリリーの大きな写真を見ると、アマンダは脇にある鏡で笑顔をつくってみる。暖炉の上に壁に掛けられた日本刀に目をとめ、椅子を持ってきて鞘から抜いて刀身を確かめてみる。そこへリリーが参考書を手に姿を現わす。リリーはアマンダにSAT(大学進学適性試験)の指導を始める。アマンダは全く勉強する気が無い。というのも、母カレン(Kaili Vernoffv)のメールをチェックして、母がリリーにお金を支払って交流させようとしたのを知っているからだ。アマンダはその件を尋ねるが、リリーは友情からだとはぐらかす。リリーはアマンダの引き起こした事件が気になっていた。馬をナイフで切り刻んで安楽死させたという事件だ。リリーがアマンダにその話題をふると、アマンダは自分には嬉しいとか悲しいといった感情がないことに気が付き、他人の感情表現を真似して来たと告白する。形ばかりの勉強を終えた後、アマンダはリリーに「両価感情」という言葉を突然投げかける。それはリリーに問われながらアマンダが解答しないままだった設問の答えで、正答とされることが多い選択肢だとアマンダは解説してみせる。二人は徐々にかつての関係を取り戻し、カウチに座って古い映画を見ながら夜まで語り合う。その晩はリリーの母シンシア(Francie Swift)はパーティーで不在だった。継父のマーク(Paul Sparks)が話があるから部屋に来るようリリーに告げ、アマンダに帰るよう促す。これまでのリリーとの会話やマークの話しぶりから、リリーと継父の関係を把握したアマンダは、リリーと口裏を合わせるように応答する。リリーにとってマークは邪魔な存在であった。

 

アマンダと馬、そして刀身が光るナイフという短いカットが冒頭に挿入され、直後にアマンダがリリーの屋敷を訪れるシーンへと展開する。危うさを目に焼き付けさせながらも表現は必要最小限に押しとどめ、リリーとアマンダの二人の会話によって徐々に状況が詳らかにされていく。モデル然としたリリーとアマンダ、上流家庭の洗練された設え。語りすぎない映像とそれを補う音とによってスタイリッシュに仕上げられた作品。

アマンダが触媒となってリリーの本性を現わさせる。

冒頭の、リリーの乗馬姿の写真を目に焼き付けておくと良い。

Anya Taylor-Joyに見とれた。