可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 淺井裕介個展『なんか/食わせろ』

展覧会『淺井裕介個展「なんか/食わせろ」』を鑑賞しての備忘録
ANOMALYにて、2020年3月7日~4月4日。

制作地の土を用いた絵画などで知られる淺井裕介の個展。

作者が「土と水と血と脂」と題した文章を展覧会に寄せている。滞在先で絵具として用いる土を手に入れる際、「スコップ越しにざっくりと手に伝わる感触、指で挟みすり潰すと指先に伝わるザラザラとした感触」を味わうことを、制作への足掛かりとしているという。例えば、植物の根っこの表現に土を掘り出す感覚を、絵具の粒状感に「ザラザラとした感触」を鑑賞者も感じられる。作品に時折現れる目と手とを組み合わせた図像も、視覚と同等に(あるいはそれ以上に)触覚を伝えようという作者の意図を汲むことができる。あまりに視覚に偏重した社会に対してアーティストは危険を察知していて、それが自然と表現に組み込まれるようだ(例えば《盲目の爆弾、コウモリの方法》の竹内公太はその典型)。
また、作者は、血を絵具に用いた作品も本展で発表している。「ここ数年生命力や野生をテーマに作品作りを続けていく中で野に生まれ育つ思考方法や生成される形に対する関心は高まり、土と水の包み込むような安心感の真逆のあるようなその物質と向き合い制作を行う」ようになったという。地表を動き回る生き物たち。その足下には「巨木になりうる種子やなんか」をはじめとして生命を含み持つ土が存在する。枝葉や根と生き物とが渾然と描かれた作品が、地をめくるように、地下から地上、地上から地下という生命の循環を曝け出す。そこで血液は「循環」を表すのにこれ以上ない相応しい絵具として機能しうる。