可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 花沢忍個展『ディティデペンデ』

展覧会『花沢忍個展「ディティデペンデ」』を鑑賞しての備忘録
Bambinart Galleryにて、2020年11月28日~12月13日。

花沢忍の絵画12点を紹介。

《red night》は、寝そべって片肘を突いて頭を支えながらワインを呑む人物を描く。腹の辺りには大きな猫が丸まり、その猫に重なるかのように人物の腰の位置には小さめの猫がやはり丸まっている。人物の背景のクリムゾンは手すり壁かあるいはソファか。画面の上部7分の3には夜空が広がり、星が瞬く。星々の間には線が結ばれ、星座が示される。ワイングラスのワインは底にわずかだけ残されている。グラスに伸ばされる左手は残像を伴って二重に表され、時間の経過が強調されている。ワインを飲むと当然グラスのワインは減っていく。しかし「私」がワインを飲むことで、世界にはワインが満たされていく。夜はワインに呑み込まれていく。ワインたるクリムゾンの色面が少しずつその水位を上げていくのだ。そして、世界を浸すワインにストローを差し込むように、星座は酔って手足(あるいは触手?)をだらしなく拡げるだろう。

《BLACK, FISH, バナナみかん》は、咲き誇る花々を中心に、肌の黒い男女、猫、魚、少女、蛸、蟹、樹木、草叢、フレディ・マーキュリー(?)、星、天使、車などが描き込まれる。星座の浮かぶ夜空には"BLACK"の文字が描き込まれ、魚の入った水槽には"FISH"の文字が記されている。「バナナ」は肌の黒い男のパンツの模様として描かれ、「みかん」は地面に置かれたシャツのデザインとして表されている。英語、カタカナ、ひらがなが混在するタイトルは、指し示すものも色、魚、衣服のデザインに跨がっている。全て画面に絵具で描かれている点で統一されるのだ。水槽の中であろうと外であろうと、水中であろうと夜空であろうと、自由に泳ぎ回る魚が、絵画が全てを覆い尽くす力を象徴している。

《幸福.2》には、横たわった状態で闇の中に浮かぶ人物が描かれている。画面の下(外)から延びる腕がその身体を支えているらしい。口からはエクトプラズムらしきものが吐き出され、「幸福」という黄緑色の文字が浮かんでいる。横たわる人物に重なる人物の影、近くに現れる顔、彗星のように尾をひいて飛び交うもの。彗星は古く凶兆であったことを思えば、凶事に際して他者に委ねて惰眠を貪る人々への揶揄とも解される。「お前次第(depende de ti)」という展覧会のタイトルの意味が浮上する。

《自分、空間を超えて》は草原(?)に佇む人面の牛を描く。赤い空には黒いヘビが下弦の月に向かって真っ直ぐに延びている(延びるヘビは《あのときのサルサ》にも登場)。いずれ月は姿を見せなくなる。延びるヘビは尾を呑み込むのを止めたウロボロスであろう。終末の到来を訴えている。それなら、人面の牛は白沢であるのかもしれない。そこには病魔除けの願いが籠められている。