展覧会『FACE展2022』を鑑賞しての備忘録
SOMPO美術館にて、2022年2月19日~3月13日。
SOMPO美術財団が実施する公募展の第10回。1,142名の応募があり、三次の審査を経た入選作品83点を展示。グランプリを受賞した新藤杏子《Farewell》を始め、9作品が入賞。
大山智子の《AMAKUSA》(1620mm×1940mm)(優秀賞受賞)は、明るい灰色でのっぺりと表わされた穏やかな表情の海に散在する、青や緑や紫の島影を鳥瞰して描く作品。海は空との境が無く、茫洋と広がる。島の形は、空に浮かぶ雲に様々な形を見出すように、剪定された松、自動車、帽子、クロワッサンなどを連想させるような不定型で、それぞれが微妙に色合いを違えた、青、緑、紫などで塗り込められている。画面中段の左にある島から右手奥へ向かって白い橋が真っ直ぐに延び、その白線に重ねられた円弧がリズムを作る。緑の島に赤の矩形、青い島に濃い黄の矩形など、補色(に近い色)の配置が画面を引き締めている。天橋立図の系譜に連なる景観の鳥瞰図であるとともに、切り出した色紙を配置するような抽象化によって枯山水のイメージも引き寄せる。
石神雄介《星を見た日》(1940mm×1620mm)(優秀賞受賞)は、車のボンネットに凭れ掛かって星空を見上げる男女を描く。画面の下側4分の1は白い地面で、そこに地面と同色の車が停まり、そのボンネットにポケットに手を突っ込んだ男女が背を凭せ掛けて星空を眺めている。車は高台に停められているのか、画面の上側4分の3は、星空に包まれている。夜空の3分の1は、オーロラのようなエメラルド・グリーンの帯が揺れていて、それが本作をとりわけ印象付ける。画面の最上段には、右上から左下方向へ流星(群)が光の尾を引いて流れ落ちていく。車と流星の丸み、流星のカーヴと男女の反った姿勢、夜空の星と呼応するような地面の石(?)の輝きなどが、人間の営みが宇宙のただ中で行なわれていることを伝える。男性の着るジャケットは透過性のある青で表わされ、なおかつ星の輝きが映り込んでいる。宇宙(コスモス)と人間(ミクロコスモス)の照応を示している。
奥谷風香の《田んぼのリズム~稲刈りの季節~》(970mm×1940mm)は、刈り取った稲を稲木にはさかけした情景を描いた作品。畦に囲まれた田(作土)を舞台に、はさかけされた稲が姿を現わす。田園風景は、画面上部から下部にかけて横方向に延びる7つの色面に単純化され、空、山、稲、作土、畦などを表わすエメラルド・グリーン、緑、黄土などに塗り分けられている。背景の山並み、はさかけされた稲、畦がそれぞれ波形(≒音)で揃い、「田んぼのリズム」を生み出している。