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芸術鑑賞の備忘録

映画『ブライズ・スピリット 夫をシェアしたくはありません!』

映画『ブライズ・スピリット 夫をシェアしたくはありません!』を鑑賞しての備忘録
2020年製作のイギリス映画。100分。
監督は、エドワード・ホール(Edward Hall)。
原作は、ノエル・カワード(Noël Coward)の戯曲『陽気な幽霊(Blithe Spirit)』。
脚本は、ニック・モアクロフト(Nick Moorcroft)、メグ・レナード(Meg Leonard)、ピアーズ・アシュワース(Piers Ashworth)。
撮影は、エド・ワイルド(Ed Wilde)。
編集は、ポール・トシル(Paul Tothil)。
原題は、"Blithe Spirit"。

 

1937年の英国。チャールズ・コンドマイン(Dan Stevens)がタイプライターに向かって苦渋に満ちた表情を浮かべている。馬鹿なのか? たかが26文字の組み合わせじゃないか! 思わず打ったのは"HELP"の4文字。酒瓶に手が伸びる。酒を呷ると大音量でレコードをかける。早朝からの騒音に、妻のルース(Isla Fisher)は寝室を出て離れに向かい、建物の外から音量を下げるよう叫ぶ。部屋に戻る際、ルースはメイドのイーディス(Aimee-Ffion Edwards)に、焼いたグレープ・フルーツを朝食に求める。イーディスはエドナ(Michele Dotrice)とともに台所で朝食の準備をする。冷めたトーストだとご主人に突っ返されるから早く持ってお行き! イーティスは慌ててトレーを運ぶ。チャールズはトーストを手に取ると、トーストの語源は「焦がす」なんだと講釈して、焦げ目の付いていないパンを突き返す。長いスランプに陥っている夫の尻を叩きつつ、ルースは庭造りに執心している。庭師のハロルド(Dave Johns)とともに庭にいると、書斎からタイプライターが投げ出され、彫刻に打つかって頭が取れてしまう。心配したルースが書斎に入ると、チャールズの傍らには先妻エルヴィラ(Leslie Mann)と撮影した写真があった。資料を整理していたらたまたま出てきたんだ。あなたは私が先妻のことを気にするとでも思っているの? 気を遣う必要なんてないわ。それにしても自分の小説を脚本に書き換えるのにそんなに苦労するものなのかしら? チャールズは、ルースの父ヘンリー・マッキントッシュ(Simon Kunz)から、小説第一作を映画のシナリオにするよう求められていた。ルースがブラッドマン夫人(Emilia Fox)とテニスに興じている。ルースは、強烈なサーヴを続けざまに打ち込み、勝利を収める。チャールズったら先妻の写真を大事にしてるのよ。あなた、シーツを揺らす男性が必要じゃないかしら? 夫婦の間にはいろいろあるものよ。欲求不満のルースにブラッドマン夫人が助言する。2人が座る傍をブラッドマン夫人のコーチ(Zach Wyatt)が通りがかる。指導した内容を忘れてませんよね? ええ、グリップを強く握るの。チャールズは友人で医師のブラッドマン(Julian Rhind-Tutt)を相手に、才能の枯渇を嘆いていた。芸術家は必ずスランプに陥る時期があるものだろう? 心配することはないさ。男性機能にも支障があるんだ。ならこれを試してみろ、活力が漲る。ブラッドマンが薬瓶を取り出す。常習性はないのか? 長年しているが問題ない。薬を服用したチャールズは勢力を回復し、久々の気分の高揚を味わう。コンドマイン夫妻とブラッドマン夫妻は連れだってマダム・アカルティ(Judi Dench)の降霊術ショーを鑑賞する。海に浮かぶ巨大な満月を背景にした舞台でマダム・アカルティの身体が次第に上昇していく。助手のシン(Adil Ray)が舞台袖で必死にロープを引き上げていたがクランクが折れて、マダム・アカルティの身体はオーケストラ・ピットへ転落してしまう。イーディスを伴い見物していたエドナはやっぱりインチキだったと吐き捨てるように零す。観衆は席を立ち、記者は楽屋へ押しかけようとする。シンが記者をブロックしている脇をすり抜けてチャールズが楽屋にマダム・アカルティを訪ねる。犯罪小説で受賞歴のある作家です。大衆を楽しませるためにはいろいろな工夫が必要なものですよね。ぜひ貴女を我が家にお招きしたい。有力者との知遇を得るチャンスもあるかもしれません。舞台で醜態を晒した失意のマダム・アカルティは説得され、夏至の夜に伺いましょうと応じた。コンドマイン邸での降霊会。コンドマイン夫妻、ブラッドマン夫妻とマダム・アカルティとが円卓に座って手を繋ぐ。マダム・アカルティは大真面目に霊との交信を行っているが、ブラッドマンなどは彼女を露骨に揶揄する。ブラッドマンほどでないにせよ、他の3人もときに笑いを抑えることができない。だがマダム・アカルティから最近亡くなった人で繰り返し思い返している人はいないかと訪ねられたチャールズは言葉に詰まってしまう。折に触れて7年前に事故死したエルヴィラを思い出していたからだ。チャールズは特にいないと返答するが、そのとき突然強い風が屋敷に吹きつけ、マダム・アカルティは失神してしまう。意識を取り戻したマダム・アカルティは、これまでこんな経験をしたことがないと、降霊した存在を見ていないかと尋ねるが、誰も目にしていなかった。降霊会が散会し、チャールズが寝室に向かうと、ルースが"Carpe diem"と言うでしょ、執筆の材料を得た今書かないでどうするの、とチャールズに執筆を促す。チャールズが書斎に向かおうとリヴィングを通り抜けているとき、背後に何か気配を感じた。

 

犯罪小説で名を馳せる作家のチャールズ・コンドマイン(Dan Stevens)はスランプに陥っていた。妻ルース(Isla Fisher)の父ヘンリー・マッキントッシュ(Simon Kunz)から、小説第一作を映画のシナリオに翻案するよう求められていたが、全く書き始めることができない。執筆の材料にしようとマダム・アカルティ(Judi Dench)を招き降霊会を開くと、チャールズの前に、7年前に落馬事故で急逝したはずの先妻エルヴィラ(Leslie Mann)の姿が現れる。エルヴィラは自らの死に気付いておらず、邸内の変わりように驚き、憤慨する。

降霊したエルヴィラ(Leslie Mann)の暴れようが小気味よい。終盤の展開もその雰囲気に合ったものとなっている。
マダム・アカルティ(Judi Dench)は、エルヴィラを召喚できたことで初めて自らの降霊能力に自信を得て、長年望んできた戦死した夫の降霊に成功する。
エルヴィラの衣装や、部屋ごとに異なる色彩で見せるコンドマイン邸の室内装飾が目に鮮やか。
冒頭、おどおどしたキャラクターのイーディス(Aimee-Ffion Edwards)が印象づけられるが、後半ではそれほど物語の進行に絡んで来ないのがやや拍子抜けであった。