映画『恋は光』を鑑賞しての備忘録
2022年製作の日本映画。
111分。
監督・脚本は、小林啓一。
原作は、秋★枝の漫画『恋は光』。
撮影は、野村昌平。
録音は、日高成幸。
プロダクションデザイナーは、竹渕絢子と齋藤しおり。
装飾は、田中悠希。
持ち道具・絵画制作は、市川知美。
衣装は、阿部公美。
ヘアメイクは、夏海。
音楽は、野村卓史。
大学のカフェテリアのテラス席。友人とお茶をしていた宿木(馬場ふみか)は、突然女子学生(花岡咲)から冷たい飲み物を頭にかけられる。一緒にテーブルを囲んでいた友人たち(森日菜美・山田愛奈)が呆気にとられる中、宿木は、暑いから冷たいものが丁度良かったと動じず、プラスティックのカップを握り潰す。近くの席で紙パックの野菜ジュースを飲んでいた北代(西野七瀬)はそんな宿木の姿を見て思わず笑い出す。
センセイ! 北代は大学からの帰りがけに幼馴染みの西条(神尾楓珠)に出くわす。北代よ、女子は発情期を迎えているのか? 女子学生たちの身体から発散される光の粒に圧倒されている西条が思いを吐露する。いろいろと出会いの多い季節だからねと生真面目な西条の問いに答えてやると、北代はバイトがあるからと言って立ち去る。
大教室で西条が講義を受けている。ふと布のカヴァーの付いた手帳の忘れ物に気が付く。「東雲」とある。パラパラと捲ると、数々の文学作品の読書の感想が丹念に綴られていた。西条は赤いペンを取り出すと、講義そっちのけで校閲していく。講義が終わり、教室を出て行く学生たちと擦れ違いで1人の女子学生(平祐奈)が教室に入って来て、西条の座っていた席の辺りで何かを探し始めた。西条が声をかけて手帖を差し出すと、それは彼女のものだった。
西条は、北代のアルバイト先である日用雑貨店を訪れる。ここは女子がいないので落ち着く。ここに美女がいるけどね。西条は北代から発される光を目にしたことがない。東雲という女子学生を知らないか? 東雲ってあの東雲? 西条は北代に東雲を紹介するよう求める。北代は遊びに連れて行ってくれるならと西条の求めに応じる。
大学の構内。西条が北代に連れられて東雲のもとに向かう途中、宿木から声をかけられる。宿木は北代に西条と付き合っているのか確認する。いや、彼氏じゃないよ。
北代は西条のために東雲との仲を取り持つのだった。
大学生の西条(神尾楓珠)は、大量の読書を記録した手帖の忘れ物をきっかけに、その持ち主である東雲(平祐奈)を知る。西条から東雲を紹介するよう頼まれた幼馴染みの北代(西野七瀬)は、快く2人の中を取り持つ。だが、風変わりで、自分以外人付き合いの無かった西条に想いを寄せる女性が現れたことに、北代は内心穏やかでは無かった。一方、誰かと交際している男性に惹かれてしまう宿木(馬場ふみか)は、西条に興味を抱いてアプローチし始める。
幼い頃、離婚した両親のどちらにも引き取られなかったトラウマを抱える西条は、恋をしている女性が発する光が見えてしまう。西条の個性的な話し方と彼の特異能力の可視化とによって、大学生の恋愛模様をファンタジーに仕立てている。
西条は出版社から校閲の仕事を引き受け、学費を稼いでいる。
東雲が手帖に付けている読書記録は誰にも見せるものではなかったが、偶然手にした西条によって読書記録が校閲されたことによって、東雲は自らの書いたものに反応がある喜びを知る。西条に対し生まれた感情が、果たして数々の文学に描かれてきた恋であるのかどうか、東雲は確信を持つことができない。文学に耽溺している他に、両親を事故で失って祖母に引き取られた過去を持つ点で、東雲には西条と似ているところがある。