可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 近藤七彩個展『無用の用』

展覧会『近藤七彩展「無用の用」』を鑑賞しての備忘録
日本橋髙島屋本館6階 美術画廊Xにて、2022年7月27日~8月15日。

古い家具・建具・置物などを再構成した立体作品13点で構成される、近藤七彩の個展。

《回転こけし》(280mm×280mm×650mm)は、鍋の蓋に載せた地球儀の頂部に、こけしを取り付けた緯度尺を設置した作品。鍋蓋の円、地球儀の球、緯度尺の弧、こけしの円柱と、円のイメージが繰り返されることで、静止した地球儀とこけしの回転運動を呼び覚ます。もっとも、この作品の肝は、緯度尺という計測装置の一種を用いて、こけしが地球儀に匹敵する大きさであることを示してしまう点にある。玩具から地球まで、微視的・巨視的を問わず、同じ物理法則が働いていることをコミカルに表わしている。

《無用建具#1》(1900mm×50mm×960mm)・《無用建具#2》(1900mm×50mm×960mm)は、腰付大額入り障子の竪框・上桟・下桟・組子を斜めに切断し、横倒しにして竪框で上下に繋いだ作品。《無用建具改#1》(1000mm×50mm×1300mm)では切断部を増やして菱形に近い形に構成し、ピート・モンドリアン(Piet Mondrian)の絵画を連想させる造形に仕上げている。いずれの作品も天井から吊して展示することで、壁面に作る影を合わせて楽しむことが狙われている。

《Up and Down 箪笥》(800mm×450mm×1100mm)は、箪笥を斜めに切断し、棚を階段状にした作品。上に向かって棚板が広くなるものと、下に向かって棚板が広くなるものとが組になっている。段々となった棚板は時間であり、各段の広がり(あるいは狭まり)によって時間の自在の往来を連想させる。

こけしこけし》(100mm×100mm×660mm)は、2つのこけしを風鎮を挟んで頭部同士で接続した作品。正立が表わす「用」と倒立が表わす「無用」とを組み合わせ、その全体が倒立しても同じ形となることを示すことで、「用」と「無用」との反転可能性を訴える。展覧会に冠した「無用の用」を象徴する作品。