可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 三輪瑛士個展『RuminatioN』

展覧会『Eiji Miwa「RuminatioN」』を鑑賞しての備忘録
(hIDE) GALLERYにて、2023年10月28日~11月12日。

肖像画あるいはそれに類する作品5点と、パーティーないし会食に集う人々を描いた作品4点とで構成される、三輪瑛士の絵画展。
描き込んだように見える複雑な画面は、予想外に反し比較的少ない筆数で的確に作られている。

《No.23082》(1620mm×1620mm)は、円卓を囲む人々を中心にパーティーを描いた作品。背の高い蝋燭を立て、花が飾られ、料理を載せた皿と沢山のグラスが並ぶテーブル。席に着くのは正装した男性。給仕の腕が伸びる。周囲には大勢の人々が描かれている。一見したところ、ピエール=オーギュスト・ルノワール(ピエール=オーギュスト・ルノワールPierre-Auguste Renoir)の《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会(Bal du moulin de la Galette)》のような賑やかな画面である。だが目を凝らすうち、パーティーに集う人々の姿は縮尺がちぐはぐで、様々な場面が混在していることが分かってくる。ムーヴィング・フォーカス的であったり、異時同図的であったり、それは複眼的に場面を捉えていると言えるようだ。その複雑な情景から受ける印象とは異なり、筆数はは極めて抑制されている。そのため、描写は乱雑とさえ評し得よう。だが、それでいて、多くのモティーフ――老人、女性、ウェイター、グラス、花、蝋燭など――が巧みに描き分けられているのだ。実際にパーティーに出席した際の経験――あるいは映画などでのパーティーの場面を目撃した際の印象――が、光学的機構から受ける視覚情報その他の感覚から情報を統御し、状況を把握する過程そのものを描き出すような作品である。
保育器かベビーベッドか、仰向けに横たわる赤ん坊を描いた《No.23061》(910mm×623mm)では、上を向いて舌を出す顔、右耳、握られた右手、胴体、胸に下げられたプレート、大きな臍、右の膝小僧などが明確に表わされている。それは作家が注目する部位なのだろう。両目や左手が部分的な異時同図的に描かれることで、赤ん坊の動きが表わされるが、それは異形の存在であるかのように、見る者に拭いがたい印象を残す。
《No.23092》(455mm×380mm)では、主に水色など青の絵の具で塗られた背景に、白いシャツの男の顔が表わされる。フランシス・ベーコン(Francis Bacon)の影響が見て取れる激しい筆遣いで表わされた、歪んだ肉塊としての頭部中央には、精彩な左目が颱風の目のように無風の中心として機能し、男はキュクロプスのような異形の存在として姿を現わす。