可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『マダム・ウェブ』

映画『マダム・ウェブ』を鑑賞しての備忘録
2024年製作のアメリカ映画。
116分。
監督は、S・J・クラークソン(S. J. Clarkson)。
原案は、ケレム・サンガ(Kerem Sanga)、マット・サザマ(Matt Sazama)、バーク・シャープレス(Burk Sharpless)。
脚本は、マット・サザマ(Matt Sazama)、バーク・シャープレス(Burk Sharpless)、クレア・パーカー(Claire Parker)、S・J・クラークソン(S. J. Clarkson)。
撮影は、マウロ・フィオーレ(Mauro Fiore)。
美術は、イーサン・トブマン(Ethan Tobman)。
衣装は、ギラ・ディクソン(Ngila Dickson)。
編集は、リー・フォルサム・ボイド(Leigh Folsom Boyd)。
音楽は、ヨハン・セーデルクビスト(Johan Söderqvist)。
原題は、"Madame Web"。

 

1973年。ペルー。アマゾン川流域。コンスタンス・ウェブ(Kerry Bishé)がクモの調査に当たっている。蜘蛛の巣の写真を撮影していると、コンスタンスの探索に協力するエゼキエル・シムズ(Tahar Rahim)が近付いて尋ねる。もう一息で捕まえられるか? 見付けることはほとんど不可能なの。生きたまま捕まえた人はいないわ。護衛に同意したのはもうすぐクモを捕まえると思ったからだ。待つだけの価値がないわけじゃないわ。死んだ標本からクモの毒に含まれるペプチドが細胞構造を強化していることが分かるから。そのクモには超人的な強さと力を与えてくれる可能性がある、ラスアラーニャス? 樹冠を駆け巡り毒で邪悪な人々を懲らしめる神話上のクモ人間のこと? 私は伝説ではなくて科学の研究がしたいの。ここでは力は浪費されている。これらのクモには多くの病気を治癒する可能性があるわ。コンスタンスが痛みに悲鳴を上げる。大丈夫か? 娘が研究させないように全力を尽してるの。娘にそんなことさせないわ。休んだ方がいい。時間がないの。傘をありがとう。コンスタンスはエゼキエルから赤い傘を受け取る。
エゼキエルは先にキャンプに戻る。コンスタンスの蒐集したクモの入った瓶を確認する。コンスタンスの手帖の中身を小型カメラで撮影する。そこへコンスタンスが見付けたと言って戻って来る。信じられないわ。すごく小さくて、でもすごく力強いの。コンスタンスと発見を喜んでいた研究仲間たちがエゼキエルによって次々と銃で撃たれる。何してるの? 訳が分からない。長年そのクモを探してたんだ。多くの人を助けられる可能性があるのよ。人助けに興味はない。私の家族が飢えているときに誰も助けてくれやしなかった。俺の人生はお前さんのほど澄み切っちゃいない。同じようには生きられない。間違ってるわ。そのクモをよこせ。間違ってる。よこせ。エゼキエルはコンスタンスに銃弾を撃ち込み、ガラス壜に入ったクモを取り上げると、逃げ去った。
倒れたコンスタンスのもとに身体を赤い顔料と縄で装ったラスアラーニャスが駆け付け、抱き抱える。彼らにより連れ去られたのは洞窟の中の泉だった。水に浸かったコンスタンスの胸元にクモが這わせられる。サンティアゴ(José María Yazpik)がコンスタンスの娘を取り上げる。この娘の人生は平坦ではないが、強い。答えが必要なときにはここに戻って来るだろう。そのとき私はここにいる。
2003年。ニューヨーク。救命士のカッサンドラ・ウェブ(Dakota Johnson)が救急車を運転している。こちら210。42歳女性、コード3。無線で連絡を入れる。患者の処置に当たっているベン・パーカー(Adam Scott)が脈拍停止と胸骨圧迫開始を告げる。何のためにそこにいるのよ。代るか? 運転なら出来る。飛び出して来る車を右に左に避けながらカッサンドラが救急車を走らせる。フラフラ運転してたら撃たれたけどね。軍隊にいればいいのよ。クイーンズに戻ってこられてこんなに嬉しいとわね。クイーンズで撃たれた方がいいわけ? スケートボードに乗った制服を着た少女(Celeste O'Connor)が救急車の前に飛び出してくる。学校にいるべきでしょ。彼女は謝るどころか中指を立てて立ち去った。
カッサンドラとベンが搬送を終え、病院で飲み物を買って一息吐こうとしていると、看護師(Deirdre McCourt)が寄ってきた。彼女は問題無いわ。誰が? あなたたちが搬送した患者さん。息子さんが感謝したいって。少年(Yuma Feldman)が絵を手にして看護師に付いてきていた。このベン・パーカーが全てやってくれたの。受け取れよ。ベンはカッサンドラに絵を受け取るよう促す。ありがとう。少年は父親(Josh Drennen)とともに立ち去る。眼鏡をかけた少女(Sydney Sweeney)が父親に家で待ってると告げて父と義理の弟を見送っていた。カッサンドラは絵をどうすればいいかベンに尋ねると、とりあえずポケットにしまってどこか別の場所で捨てろと言う。硬くて折りたためもしないけど。

 

1973年。ペルー。アマゾン川流域の密林でコンスタンス・ウェブ(Kerry Bishé)が特殊な治療効果のあるクモの調査に当たっていた。彼女は妊娠中の娘に遺伝性神経筋疾患があることを知り、その治癒をクモに賭けていたのだ。コンスタンスが遂にクモを発見すると、警備などで協力していたエゼキエル・シムズ(Tahar Rahim)が自らも長年探し回っていたとコンスタンスたちを銃撃しクモを奪って逃げ去った。コンスタンスはクモのように行動する地元民ラスアラーニャスたちに救出されるが、サンティアゴ(José María Yazpik)がコンスタンスの娘を取り上げた後、絶命した。
2003年。ニューヨーク。救命士のカッサンドラ・ウェブ(Dakota Johnson)は同僚のベン・パーカー(Adam Scott)とともに多忙な日々を送っていた。ある日橋上の交通事故でひっくり返った自動車から運転手を救出した際、カッサンドラは車ごと川に転落してしまう。3分間水中に閉じ込められて仮死状態に陥ったカッサンドラは蘇生した後、ベンが同じ事を二度繰り返して言うのを不審に思う。

(以下では、冒頭以外の内容についても言及する。)

カッサンドラは川に車ごと転落して仮死状態に陥った後、周囲の人間が2度同じ事を繰り返す経験を味わうようになる。カッサンドラの潜在能力が臨死体験を経て覚醒しつつあったのだが、未知の能力のため最初はデジャヴにとしか思われない。だが同僚のオニール(Mike Epps)が交通事故を起こすイメージが浮かんだ後、実際にオニールが事故を起こすに及び、未来が見えることに気が付く。だが飽くまでも予知のイメージに襲われるに過ぎず、望んで予知する訳にはいかない。
エゼキエルは強奪したクモによって超人的な身体能力を手に入れるが、自分が殺される夢に毎晩のように苛まれる。エゼキエルはそれを予知夢だとして、将来自らを殺害に来る3人の女性を探し出し、殺害することを企てる。
カッサンドラは電車に乗り合わせた3人の少女が見知らぬ男によって殺害されるイメージに襲われる。カッサンドラはその未来の可能性を排除すべく、列車の発車直前に3人の少女を車両から降ろす。少女たちにとってカッサンドラは不審者にしか見えないが、彼女たちを追いかけるクモのような動きの男の存在に気付く。
袖振り合うも他生の縁で、カッサンドラと少女たちの間には過去に接触があった。スケートボードに乗ってカッサンドラの救急車を止めたのがマティー・フランクリン(Celeste O'Connor)、カッサンドラの搬送した患者の義理の娘がシドニー・スウィニー(Sydney Sweeney)、カッサンドラのアパルトマンの階下に住むのがアーニャ・コラソン(Isabela Merced)だった。
自らを妊娠していた母親コンスタンスがクモの研究のためにペルーに渡り亡くなったことをカッサンドラは理解できなかった。それでも母の遺品である手帖などを折に触れ見返していた。
孤児として育ったカッサンドラは家族に対する愛着を持てずにいた。救命士として活動し、患者の家族から感謝されても、業務を遂行したまでと実感が湧かない。それでも謎の男に襲われる少女たちを守るうち、次第に自らが守るべき存在に対する愛情を高めていく。
そもそも悪い結果を招来しないように事前に対策を講じるのは、結果が起きてから対処するよりも望ましい。ただうまく対処できるとき、予知能力を持たない者にはあり得た不幸な世界は見えない。その意味では、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(Spider-Man: No Way Home)』(2021)に通じるものがある。