展覧会『隙間 12.0 平山昌尚「ART SHOW 2」』を鑑賞しての備忘録
隙間にて、2024年3月9日~17日。
灰色の画面に青い絵具で"ART"と"→"とを描いた案内板のような作品を会場に巡らせた、平山昌尚の個展。
床も壁も柱も天井もコンクリートが剥き出しの会場の入口近くの壁には、青い絵具で画面上半分に"ART"、下半分に"→"を描き、その周囲を灰色で塗り潰した紙が貼ってある。指示通りに右方向に歩いて行くと、また壁に同じ様な"ART"と"→"を描いた紙が貼ってあり、右方向に歩くと、三度同じ様な作品が掲げられている。会場の壁と柱には全部で10枚の同様の作品が展示され、順に作品を追っていくと、入口近くの作品に導かれることになる。文字通り、堂々巡りである。
作品は、"ART"のシニフィアンである。作家は"ART"がイデアであり、それ自体を人が知覚することはできないと考えるのだろう。コンクリートが剥き出しとなった会場は、洞窟に比せられる。その中を徘徊する鑑賞者は"ART"の影だけを追っているのだ。シニフィアンとしての作品によってイデアとしての"ART"を想起すべく只管努めることを作家は求めるのである。同時に、作品は、イデアとしての"ART"を想起する作家の実践そのものとして存在する。そして、堂々巡りとなるインスタレーションは、個々の"ART"の探究の集積としての、美術の歴史自体を表現したものとも解される。