展覧会『「第22回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」展』を鑑賞しての備忘録
川崎市岡本太郎美術館にて、2019年2月15日~4月14日。
第22回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)の入選作家25組の作品を紹介する企画。
岡野茜《意味のない箱》について。
壁に向かって両側を白いカーテンで仕切った空間。正面の壁には、三幅対を成すモノクロームの絵画。その手前には、棺桶を思わせる白い箱(蓋は無い)が3列で計12個並べられ、それぞれには砂が固められて入っている。三幅対の中央の画面には、遺影らしきグレーの長方形を描いた上段と、骨壺が入っているかような白い箱が設置された下段から成る祭壇が描かれている。下段に座り込む「人」、祭壇の前に仰向けに寝そべる「人」、祭壇脇には中から這い出たような「人」が存在する。左右の画面には、5人ずつ、「人」が画面左手から右手へと向かって歩いている。所々に燃え尽きた焚火が煙を垂直に上らせている。上部には天幕のようなものがかかっている。
描かれた「人」は13人いるのに、棺のような箱は12個しか存在しない。「1つ足りない」ために「意味のない箱」なのか。「棺桶」にしてはサイズがやや小さいために「意味のない箱」なのか。箱の内容物(砂)が役に立たないため「意味のない箱」なのか。「祭壇」に描かれた白い箱には白い箱である以上には「意味のない箱」なのか。作者は「顔がないのはそこに何もない があるからです。ただの物であり、人ではありません」との言葉を寄せているが、画中の「人」が「意味のない箱」となっているのか。
作者は「これはヴァニタスでもメメントモリでもない徹底的に淡泊な静物画」だとする。誰も死(祭壇)に目を向けていない。死の想念を無効とするとき、あるいは、死を宙吊りにした(骨壺の入った箱が宙に浮いている)とき、生きる意味もまた失われてしまう。still(静かな=死した)life(生)としての静物画(still life)。仰向けになり、「何も無い」を見つめる者だけが、13番目の「人」として命脈を保つ(still alive)。