可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『ワイルドライフ』

映画『ワイルドライフ』を鑑賞しての備忘録
2018年のアメリカ映画。
監督は、ポール・ダノ(Paul Dano)。
原作は、リチャード・フォード(Richard Ford)の小説"Wildlife"。
脚本は、ポール・ダノ(Paul Dano)とゾーイ・カザン(Zoe Kazan)。
現代は、"Wildlife"。

1960年のアメリカ。ジェリー・ブリンソン(Jake Gyllenhaal)は妻のジャネット(Carey Mulligan)と14歳の息子ジョー(Ed Oxenbould)とともにモンタナ州グレートフォールズに引っ越してきた。ジェリーは地元のカントリークラブでレッスンプロとして働き始めた。ジェリーはスポーツを愛好し、ジョーが転入先でアメリカンフットボールが上達することを願っている。だがジョーは父親の期待に応えるためにクラブに所属してみたものの、全く馴染めない。元教師のジャネットはジョーの学習環境を気にし、宿題に目を通すなどしている。転入先の数学のクラスでは引っ越し前の前年度の教科書を使っていると知ると、高いレベルのクラスに変えてもらうべきではないかと提案するが、ジェリーは1番になればいいと意に介さない。ジョーは新天地で両親がうまくいっっていることに内心ほっとしていた。ところが2週間ほど経った頃、ジェリーはカントリークラブのオーナーに呼び止められ、突然解雇を告げられる。客との賭けゴルフが露見したのだ。ジャネットは始まったばかりの田舎での生活に躓いたことに動揺するが、童謡は胸のうちにしまい、ジェリーを励ます。だが、新たな職探しに動き出さないばかりか、カントリークラブから再雇用の申し出を受けないジェリーに業を煮やし、ジャネットは働きに出ることを決意する。少しでも教職のキャリアを活かせる職を手に入れたかったが、田舎町に希望の職は転がっていない。それでも何とか水泳のインストラクターの職を手に入れる。アメリカンフットボールのクラブを辞めたかったジョーも写真館での助手の仕事を手に入れた。ある日ジョーが帰宅すると両親が喧嘩していた。山火事の消火活動という生命も危険に晒す任務に時給1ドルで参加するというジェリーに、ジャネットが腹を立てていたのだ。結局ジェリーは、初雪が降る頃に帰ると言い残し、トラックに乗って山火事の消火に向かってしまった。馴染みのない土地に置き去りにされたジャネットは、不安を打ち消すように突飛な行動を取り始める。不在の父と暴走する母との間でジョーも動揺するほかない。

 

山火事と家族の不和とが重ね合わされている。山火事の燃え盛る炎には消防士も為す術がないように、両親の諍いを前に息子は立ちすくむしかない。それでも、山火事にも森を再生させるというメリットがあるなら、家族内の揉め事にも再生への可能性が秘められているかもしれない。

ジョーは写真館で記念写真をとる仕事をしている。新婚カップル、老夫婦、家族。ファインダーをのぞいた先に、笑顔の人々が収まっている。ジョーは、写真の可能性に賭ける。

ジョーにとっての、ルース=アン(Zoe Margaret Colletti)の存在が良い。困窮しているときにでも手を差し伸べてくれる人がいることを表しているようだ。渦中の人には差し伸べられた手に気付くことも難しいのだとしても。