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芸術鑑賞の備忘録

展覧会『十九世紀ミラビリア博物誌―ミスター・ラウドンの蒐集室より』

展覧会『十九世紀ミラビリア博物誌―ミスター・ラウドンの蒐集室より』を鑑賞しての備忘録
インターメディアテク〔GREY CUBE〕にて、2019年10月19日~2020年2月24日。

現代美術のコレクターであるジョージ・ラウドンが蒐集した「19世紀科学」の成果の一端を示す教育用標本を紹介する企画。

19世紀教育用標本に見る「サイエンス×フィクション」。
ラウドンの教育用標本蒐集の発端となったのが、ブラシュカ父子が制作した十九世紀ガラス標本、通称「ブラシュカ模型」。無脊椎動物は生体を保存することが困難であったため、ガラスで模型を作ることで展示に供することを可能にした。リンゴマイマイエスカルゴ)など陸生巻貝の標本では、ガラス製の軟体部に本物の殻を合わせている。「虚構+実物」の標本となっている。
「虚構+実物」の標本という意味では、鱗翅類鱗粉転写標本がある。鱗翅類の翅に溶液を塗布して鱗粉だけを写し取り、立体的でヴォリュームのある胴体部を描写で補ったもの。
顔面にグリッドを描き込んだ観相学人頭は、今日では「疑似サイエンス」に分類されるもの。だが現在から振り返って否定するのではなく、模型の制作された同時代的な視点から評価すれば、虚構が科学を駆動させる力となっていることが把握できる。
アナログなレイヤー構造を採用したザリガニの仕掛け絵本。いくつかのパートに分けてプレート化し、それらをめくるようにして生体を理解させる「フラップアナトミー」。