展覧会『矢後直規展「婆娑羅」』を鑑賞しての備忘録
ラフォーレミュージアム原宿にて、2020年2月22日~3月8日。
アートディレクター矢後直規の、2015年から現在までの20を超える仕事を振り返る企画。なお、作品番号として、dish1~21、wall1~4がそれぞれに付されている。
"dish3"の(天井は無いが)コンテナのような空間の壁面に掲げられたファッションブランドJOSEPHのポスター。正面奥には、自らの黒い大きな影を前に立ち尽くす女性を描いたもの(原画?)。そのスカートは風に靡いて膨らんでいる。単身の女性の立像、影、風といった要素は、同じ空間にあるストライプを活かした作品やシンプルなグレーの壁面とも相俟って、ベルギーの画家レオン・スピリアールトの作品を思い起こさせる。もっとも、スピリアールトの持つミソジニー的性格とは全く反対に、女性に対する応援歌(「わたしはわたしのラーメンたべる」とか)が聞こえてきそうな作風。
個人的には「数式はいらない」けどけど、"dish19"の矢野顕子のCD『ふたりぼっちで行こう』のジャケットへの大胆な数式の取り込みはすごい。「周回積分記号」(「インテグラル」に丸印がついているものをそう呼ぶようだ)なんて計算したことはおろか見るのも初めてだった。
"dish16"の無加工の石に文字をプリントした「MATERIA」シリーズのチェス。駒が石で出来ていて、"rook"(石だけにrockと見間違う)などと英語の表記のみで視認性に欠け、ゲームの難度が高くなっていそう。