可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『111年目の中原淳一展』

展覧会『111年目の中原淳一展』を鑑賞しての備忘録
そごう美術館にて、2023年11月18日~2024年1月10日。

雑誌『少女の友』でのデビュー(昭和初期)から敗戦までの活動を紹介する第1章「『新しい』少女のために」、雑誌『それいゆ』での仕事を展観する第2章「『美しい暮らし』のために」、雑誌『ひまわり』と雑誌『ジュニアそれいゆ』を振り返る「平和の時代の少女のために」、初期の絵画作品や注目を浴びるきっかけとなるとともに継続的に制作された人形を展示する「中原淳一の原点と人形制作」の4章で、中原淳一の活動を回顧する企画。

会場入口には制作のための実際に使用されていいた机に制作道具や書籍などが置かれ、また女性の姿を描いた赤い表紙が印象的な『ソレイユ』の創刊号が展示されている。
銀座の百貨店で行われた人形の展覧会が雑誌『少女の友』で紹介されたことをきっかけに、同誌のでのファッションの連載や企画に携わるようになった。
きもの(和装・洋装を問わず)は自ら仕立てるものあった時代、浴衣をワンピースに仕立て直すなど、自分の持ち物でいかようにもお洒落は楽しむことができると少女たちを励ました。戦時においても、婦人標準服のヴァリエーションを示し、防空着をお出かけの際の衣服に着回しする方法も提案している。
ファッションだけでなく、川端康成を始めとした文学の紹介にも傾注した。工夫する精神と美しさをキャッチする目を肥やすためには、知性を高めることが肝要だとの信念があった。
人形作家としての側面については第4章で紹介される。人形を美術にしようという狙いがあった。この点については、昨年開催された『ボーダレス・ドールズ』展が参考になろう。1961年に病気療養した際、中原は手先のリハビリをかねて人形制作を再開した。その際、靴下や端切れを用いている。人形制作でも工夫は徹底されていた。