展覧会『写真新世紀展 2018 第41回公募 受賞作品展』を鑑賞しての備忘録
東京都写真美術館にて2018年10月27日~11月25日。
キャノンが主催する新人写真家発掘のための公募展。
Kim Kyungbong(キム・キュンボン)『優雅學』
"Philosophy of Elegance"をテーマに、街の片隅に漂着したかのように取り残されているモノを掬い取った写真。何故存在するのか不明の物体の存在感と、壁や地面のテクスチャーが印象的。21世紀のブラッサイのよう。
大塚敬太『夜の窓』
スマートフォンやPCの液晶画面を見つめる人物を、その見つめる画面に映り込んだ姿とともに捉えた写真。人物とその鏡像という画面ではカラヴァッジオのナルキッソスをすぐに思い浮かべさせる。暗い室内で光によって浮かび上がる人物像という点ではジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作品に通じる。
山越めぐみ『How to hide my Cryptocurrencies』
個々の作品だけでなく、作品の並べ方のセンスが素晴らしい。杉戸洋の『とんぼ と のりしろ』という展覧会(東京都美術館で2017年に開催)で感じた昨年の並べ方の妙を思い出した。もっとも、「復号鍵」云々の説明が全く理解できず、作者の意図がつかめなかったのが残念でならない。
Derek Man(デレク・マン)『What Do You See, Old Apple Tree?』
伝統的な果樹園を復興するプロジェクトに参加した作者が、収穫したリンゴにネガフィルムを仕掛け、リンゴをピンホールカメラとして使用して撮影した作品。「A Clockwork Orange(時計仕掛けのオレンジ)」ならぬ「Camera Obscura apples(カメラ仕掛けのアップル)」 。
タカデアズサ『踊り子たち』
バレエダンサーを捉えるモノクロームの写真。撮影者自身もダンサーであるという。その目の付け所を、眼差しの主体である男性から眼差しの客体である女性への一方通行であるドガの絵画などと比較したい。
Song-Nian Ang(ソン・ニアン・アン)『Hanging Heavy On My Eyes』
1年間の大気中の汚染物質の状態を、モノクローム写真の濃淡で表し、カレンダーのように月ごとに並べて呈示した作品。ミニマルアートの絵画作品のような印象を受けるが、定点観測で外界の状況を切り取るのは写真ならではと言える。この作品を見る者自体に写真を見る力のリトマス試験紙を突きつけるかのよう。なお、この作品がグランプリを受賞した。