可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『INSULA LUX 光の島 アントニ タウレ展』

展覧会『INSULA LUX 光の島 アントニ タウレ展』
シャネル・ネクサス・ホールにて、2019年1月16日~2月14日。

美術家アントニ・タウレ(Antoni Taulé)による絵画・写真展。タウレの日本初個展。

暗い室内空間に設けられた開口部(ほとんどは扉のようなもののない出口)から見える空と大地、そしてそこから来たる光とを描いた作品群。

"INSULA LUX"のシリーズは、作家が1970年代以降暮らしている地中海のフォルメンテーラ島(スペイン)を舞台にしている。

この島は私のインスピレーションの源泉である。私が試みるのは世界の際に達することであり、そういった意味での岸辺、あるいは境界の概念が、ここには余すところなく現実化されている。

メイン・ヴィジュアルに採用されている《L'Énigme》では、一番手前から奥に向かい4つの部屋が並び、正面には建物の外へと繋がる開口部が連なっている。いずれの部屋もがらんどうだが、一通手前の部屋の出入り口の右手の壁には、タウレの作品を思わせる絵画がかかっている。この画中画には、暗い室内と屋外への開口部、そして外からの光を見つめ佇む人物が描きこまれている。

それら(引用者註:自らの手がける作品)によって人間の内部にある建築的空間に、そのドラマチックな宇宙に分け入ることができる。光景は定着させられて、何の動きもなく、時間の外にあるがゆえに、視線と空間の間の純粋な対話を呼び覚ます。イメージの現在に留め置かれたこの広大な空っぽの空間には、進行中の未来がある。そして、それが行動を呼び起こす。私の作品には鑑賞者が不可欠の要素だと考える理由はそれだ。じっと見つめる中でその光景を”脚色する”のは彼らの自由なのだ。

《L'Énigme》における画中画は、鑑賞者が暗い室内から外へ向かって歩き出すことを促す(=「行動を呼び起こす」)、タウレのメッセージになっている。謎(Énigme)解きは作品の解釈のことだろう。本展の会場はパーテーションで複数の空間に仕切られ、《L'Énigme》を模した空間を再現している。そして、《L'Énigme》における開口部の位置に、《L'Énigme》そのものを置いている。と、気がついた時には、タウレのラビュリントスへと迷い込まされてしまっている。