展覧会『内山聡「stripe(s)」展』を鑑賞しての備忘録
Gallery OUT of PLACE TOKIOにて、2018年12月14日~2019年1月27日。
縄暖簾の縄を無数の色糸に替えたような作品が壁面にかかっている。《stripe(s)》と題されたこの作品は、作者が、9色の糸を両腕を目一杯広げた長さで切り、3本ずつ纏めた糸を黒の横糸に括り付けていく作業をひたすら繰り返して、矩形に近い画面を持つ「絵画」として制作したものである。
壁面にかかる矩形の画面という点では一般的な絵画と共通している。色材が油絵具やアクリル絵具ではなく色糸であること、支持体がキャンヴァスや板や紙ではなく黒の横糸であることが異なるのみである。それでもこの作品を即座に絵画として受け取り難いのは何故だろうか 。
意図せず組み合わされた色糸は、部分部分では赤や緑といった色彩を見せるのだが、全体としては混色して何色とも言いづらい色を呈している。この色のとらえがたさが理由の1つだろう。また、糸が垂らされている状況(上端のみ横糸に結わえられている)が不安定さを鑑賞者に与え、認識を宙づりにさせる効果を持っていることも考えられる。
だが、それ以上に、絵画に対して持つ固定観念が、本作に向き合うときに戸惑いを生じさせるのだろう。「絵画の中の物質的、身体的な『条件』を基盤にすることで、習慣を疑い、拡大する」という作者の狙いは十分に達成されている。
砂時計のように、吊り下げられた糸の数として、作者が費やした時間が可視化される。日によって切り出される糸の長さが異なることと相俟って、作者の行為の痕跡を見せる「アクションペインティング」としての性格が現われている。
暖簾は内外を緩やかに仕切る。この作品の暖簾的性質が、絵画の境界上に位置することを表している。