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芸術鑑賞の備忘録

映画『シンプル・フェイバー』

映画『シンプル・フェイバー』を鑑賞しての備忘録
2018年のアメリカ映画。
監督はポール・フェイグ(Paul Feig)。
脚本はジェシカ・シャーザー(Jessica Sharzer)。
原作はダーシー・ベル(Darcey Bell)『ささやかな頼み(A Simple Favor)』。
原題は、"A Simple Favor"。

ステファニー(Anna Kendrick)は、夫を自動車事故で亡くし、生命保険金をやりくりして小学生の息子マイルスを育てている。学校のヴォランティア活動に熱心に取り組むとともに、料理や子育てに関するお役立ち情報の動画配信にも余念がない。ある日、マイルスを学校へ迎えに行った際、マイルスの友人ニッキーの母エミリー(Blake Lively)と出会う。エミリーはエレガントなファッションに身を包んだクールな女性で、ニューヨークのファッション・ブランドで広報を担当しているという。子どもたちを遊ばせることにしたエミリーは自宅にステファニーを招く。エミリーの瀟洒な邸宅には吹き抜けのリヴィングに広いオープンキッチンが備わり、エミリーをモデルにした絵画まで飾られている。夫ショーン(Henry Golding)は、ステファニーも読んだことのあるベストセラーをものした大学の教授だった。エミリーは、キャリアを築く中で男性と対等に張り合ってきたためか言葉は汚いが、率直でさっぱりした性格。マティーニを飲みながら語らううちに、ステファニーは自分にないものを持ち合わせているエミリーと打ち解けていく。仕事に追われるエミリーからニッキーの世話と頼まれたステファニーは二つ返事で引き受けていた。ところが、ある日、ニッキーを預かったままエミリーと連絡が取れなくなる。職場に問い合わせるとマイアミへの出張ということだったが、ロンドンに見舞いに出かけていたショーンによれば子どもを預けて遊びに出たのだろうという。帰国してニッキーを引き取りに来たショーンは、警察にエミリーの失踪を届け出ることにする。ステファニーは、警察には期待できないとして、エミリーの利用したレンタカーの情報を自らが配信している動画で公開する。すると、ある有力な目撃情報が寄せられる。

ややシニカルなコメディー・タッチでスタートするが、エミリーの失踪事件から次第にサスペンス要素が濃厚になり、話が二転三転して複雑になっていく。

ステファニーの「善良さ」が持つ恐ろしさが作品のテーマの1つとなっている。特に中盤からテンポが上がるため、ストーリーの展開を追う方につい気をとられてしまうが、落ち着いて考えてみるとステファニーの危ない性格が随所に描かれていることが分かる。

冒頭から新旧のフレンチ・ポップを大胆に使用していたのが印象的。アメリカ映画でフレンチ・ポップを用いるのは洗練された感じを演出することになるのか、あるいは「Le Big Mac」("Pulp Fiction")的効果を狙っているのか。

Blake Livelyは『アデライン、100年目の恋』、『カフェ・ソサエティ』、『かごの中の瞳』で魅力を放っていた(『かごの中の瞳』の夫がおかしくなってしまうのも無理はない)。本作での「男勝りの女性」も良い。迷わずトイレに向かい、2度ノックする以外に選択肢はない。ストライプの白のスーツの着こなしは反則(会話が頭に入らない)。