可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『移植』

 

展覧会『移植』を鑑賞しての備忘録
無人島プロダクションにて、2019年3月28日~29日。

「死」と「再生」をテーマにしたグループ展。

ストレートに「死と再生」とを扱っているのは、風間サチコの木版作品《不死山トビ子》。噴火する富士山の前を駆け抜ける新幹線。列車にはねられたかのように舞う女子高校生・不死山トビ子。そして「GAMEOVER」の文字が。その下には上下を反転させた版木を置き、噴煙は「RESET」を描き、「GAMEOVER」はの文字も「WE LOVE」に置き換わっている(実際にはLOVEはハートマークで表されている)。カタストロフは再生となりうるが、死なくしては再生も難しい。

松田修4分33秒の間、カメラに向かって変な顔を作り続ける映像作品を上映。環境音から注意をそらさせることを目論むのか、鑑賞の笑いを作品に取り込もうと企むのか。無音の4分33秒は長く、顔の動きのヴァリエーションには限界がある。ジョン・ケージへのレクイエム(死)なのか、マッシュ・アップ(再生)は不明だ。

朝海陽子は街で見かけた忘れ物や落とし物を撮影した写真を展示。失われたもの(死)が帰ってくる(再生)という日本社会の特質を可視化した。

小泉明郎は自らの夢に出てくる(再生される)映像が幼時に見た特撮作品の映像であることに気が付いた。夢のイメージの断片を実際の特撮作品から切り取りつなぎ合わせ、そこに天皇明仁の即位礼の報道で流れた音声を加え、映像作品とした。文化の刷り込みがもたらす力を訴える。毒山凡太朗の《君之代》にもつながるテーマを扱っている。

八木良太エジソンが死者との交信を可能にする発明に取り組んでいたことに着目し、黒電話の受話器を用いた、非可聴域の音声受信機を出展している。過去の偉人の追求したテーマを自らの作品へと吸収することで、偉人の再生を図った。作者が関心を寄せるように、科学とオカルティズムとのつながりは面白い。インポッシブル・アーキテクチャー展(埼玉県立近代美術館)では、実現不可能な建築が新たな建築を生み出す土壌になったことが示されていたが、芸術における創造だけでなく、オカルティズムのような想像も、社会を変えていくきっかけとなっているのだろう。