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芸術鑑賞の備忘録

展覧会 野村恵子個展『Otari-Pristine Peaks 山霊の庭』

展覧会『第28回林忠彦賞受賞記念写真展 野村恵子「Otari-Pristine Peaks 山霊の庭」』を鑑賞しての備忘録
富士フイルムフォトサロン 東京にて、2019年4月19日~25日。
周南市美術館に巡回予定(2019年5月11日~19日)。

 

野村恵子が、2015から2018年にかけて、小谷村(長野県)で撮影した写真をまとめた『Otari-Pristine Peaks 山霊の庭』が第28回林忠彦賞を受賞したことを記念して催される写真展。

妊娠した女性、雪の中に佇む女性、火を見つめる女性など、凜々しい女性の肖像が何より目をひく。山深い地を舞台にしていることなど、頭の中から飛んでいってしまう。次いで、イノシシやウサギなど狩猟の獲物たちの姿が印象に残る。雪の中に置かれたイノシシの首は、殺されたはずが、生き生きと何かを問いかけるように見える。白いウサギは内臓を晒し、血を飛び散らせるが、陰惨な印象を受けない。雪の純白さと寒気とがとらえられて、画面に清浄さをもたらすのだろうか。それと対比的なのが、夜の燃えさかる炎をとらえた写真であり、妊娠した女性の写真だ。反転するイメージは、両者の相同、あるいはつながりを強く示している。人の母子とヤギの母子とを向かい合わせていた展示も、撮影地の一体的な世界を示していた。


暗く閉ざされた空間か、徹底的に明るく白い空間か、そのどちらかに展示された作品を見てみたいと思った。