可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 コア・ポア個展『Returnee』

展覧会『コア・ポア「Returnee」』を鑑賞しての備忘録
THE CLUBにて2019年4月6日~6月12日。

ロサンゼルスを拠点として活動するコア・ポア(Kour Pour)の絵画10点を紹介する企画。

《Tripple Samurai (Yoshitoshi)》と《Tripple ō-yoroi (Yoshitoshi)》は、国芳の武者絵から草摺りや大袖の部分を切り出して拡大し、縦に三段に重ねた作品。上下に並べて組みで見せる手法も浮世絵版画のダイナミズムに学んだものであろうか。水色や浅縹といった青色のグラデーションによる威毛が、落水のような全く違う世界を生む。《Shefting Landscape (Hiroshige》は広重の風景版画の一部を拡大し、やはりもとの風景とは別の世界を現前させている。筆で描くのではなく、版画の要領でインクを重ねていっているが、時の経過を思わせる擦れのような表情をつくる工夫が見られる。異文化から浮世絵を再解釈・再構成するとともに、スケールを変えることで、浮世絵の新たな地平を現出させている。《Mystic Waves (Seigaiha)》は、青海波の中に描いた屏風のような形の中に、動植物や建物、シンボルまでアジアの様々なイメージを散らしている。海の向こうから来たるまれびと(=来訪神)もグローバリゼーションやICTで多様化しているのだろう。雑然としたイメージがなぜか海に飲み込ませたのかのように、力業でまとめ上げられている。