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芸術鑑賞の備忘録

展覧会『退任記念 手塚雄二展』

展覧会『退任記念 手塚雄二展』を鑑賞しての備忘録
東京藝術大学大学美術館(本館展示室3・4)にて、2019年10月10日~24日。

東京藝術大学美術学部日本画専攻の教授を退任するのを記念して開催される手塚雄二の絵画展。

会場の一番奥には、それぞれ四曲一双の屏風である《風雲風神》と《雷神雷雲》とが並べられている。それぞれが7メートル近くあるため、横幅は10メートルを優に超える大画面の作品である。手塚の風神雷神図の特色は、風神と雷神とが木彫か乾漆像のような彫塑による立体作品を思わせるように描かれている点だ。稲光や雲も絵画の上に据えられるかのように鑑賞者の触覚を刺激する物質感が強調されている。それは、同じ展示室に展示された四曲一双の屏風《海音》においても同様で、あえてうねる波濤が固着したかのように画面に塗り込められている。もう1つの展示室にはオーギュスト・ロダンの《カレーの市民》をもとにした《市民》が展示されているが、そこにはブロンズ像などの立体作品が持つモニュメントとしての性格を絵画に導入しようとの意図が窺われる。自然現象を固着させ、それらの持つ可変性を徹底的に排除することにより、失われた動勢への鑑賞者の想念を導く効果を狙ったのではないだろうか。鑑賞者に対する想起の促しこそモニュメントの存在意義であろうし、大画面によりモニュメントとしての存在感を高めているのだろう。