可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『イエスタデイ』

映画『イエスタデイ』を鑑賞しての備忘録

2019年のイギリス映画。監督は、ダニー・ボイル(Danny Boyle)。

原案は、ジャック・バース(Jack Barth)とリチャード・カーティス(Richard Curtis)。

脚本は、リチャード・カーティス(Richard Curtis)。

原題は、"Yesterday"。

 

イングランドのサフォーク州ローストフト。ジャック・マリク(Himesh Patel)はスーパーマーケットでアルバイトをしながらシンガーソングライターとして活動している。ステージはパブか路上。ニック(Harry Michell)、キャロル(Sophia Di Martino)、ルーシー(Ellise Chappell)ら友人たちは耳を傾けてはくれるものの、一向に芽が出ない。それでも幼馴染みでジャックのマネージャーを買って出た数学教師エリー・アップルトン(Lily James)だけは彼の才能を固く信じている。ある日エリーは音楽フェスの出演交渉をまとめてくる。喜ぶジャックだったが、当日、小さなテントの会場には客はほとんど入らなかった。アルバイト先の店長(Vincent Franklin)からフルタイムで働くか退職かを迫られていたこともあり、ジャックはエリーの励ましの甲斐もなく音楽を諦めると宣言する。エリーの運転する車から降りた失意のジャックは自転車で一人家路に着く。その時、突然世界的な規模の停電が発生する。世界が暗闇の中にあった12秒の間に、ジャックは運悪くバスに轢かれてしまう。前歯を2本折るなど大怪我を負うが幸い命に別状はなく、エリーの度々の見舞いの効果もあり順調に恢復する。ニック、キャロル、エリーがジャックの退院祝いに集まり、ジャックに、カタカタ鳴る入れ歯の玩具やジャックを轢いたバスのミニカーとともに、ギターをプレゼントする。一曲請われたジャックがビートルズの「イエスタデイ」を歌うと、皆がジャックらしからぬ優れた楽曲に驚きしみじみと聞き惚れる。またからかわれているのかと思いきや、どうも様子がおかしい。家に戻り、PCでビートルズを検索してもロックバンドの情報は一切出てこない。自分のコレクションからもビートルズのレコードは一枚も無くなっていた。自分の記憶以外からビートルズの存在が消え去った世界であることを確信したジャックは、ビートルズの楽曲を必死に思い出し、いつものパブで披露する。客の反応の悪さに、楽曲ではなく自分に問題があったのだと落ち込むジャック。そこへエリーがやって来て、地元で音楽制作をしているギャビン(Alexander Arnold)からスタジオを使っての録音の申し出を受けたと告げる。

 

エリーの存在自体がファンタジー。ジャックは果報者だが、幼い頃からずっとその環境にいると気が付かないものなのだろう。その意味では、青い鳥の物語とも言える。
優れた楽曲は理解されるはずで、広く楽しまれるべきだという希望あるいは信念とが伝わる。
ビートルズのファンなら、ビートルズの楽曲やエピソードにまつわるシーンに気が付くことが多いのだろう。ビートルズが消えた世界を知るきっかけとなる「イエスタデイ」と、子供たちが楽しそうに歌っている「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」のシーンがとりわけ印象に残った。「ヘルプ!」はもう少し抑えた演出にする方が心情が伝わったのではないか。

本人役で登場するエド・シーランが良かった。「Shape of You」を着信音に設定しているという小ネタも含めて。

コメディの要素を高めるためにロッキー(Joel Fry)というキャラクターを導入しているのだが、狂言回し的な役割があることを考慮しても必要性を今ひとつ理解できなかった。