展覧会『チョン・ダウン「帆を高く上げよ！」』を鑑賞しての備忘録
GALLERY MoMo Projectsにて、2019年12月7日～2020年1月18日。
チョン・ダウンの版画展。
会場の壁面に加え、中央には、木材を組んだコの字型の展示空間が設けられている。その内側には、複数のステートによるのだろうか、差し込む光などの表現を少しずつ違えた膝を崩した女性像を1つの画面の中に貼り合わせた作品が展示されている。複数の時間を1枚の画面に表す（時間の経過を表す）異時同図法ではなく、独立した世界が複数存在する、平行世界を思わせる。見慣れないコの字型の木製展示什器には、あえて経年変化を思わせる塗装が施され、家具のような印象を受ける。表と裏との両面に作品が設置されているため、内側は裏、閉ざされた空間をイメージさせる。これが、映画『インターステラー』に登場する「本棚の裏」を連想させ、多元宇宙の存在を想起させるのだ。また、他の作品中には、穴のような空白あるいは闇が描かれたものもあり、これもブラックホールのような他の時空への回路となっている。さらに、会場の外にまで作品を設置していることも、内と外との境界を曖昧にし、時空を超える体験を来場者にもたらすのに一役買っている。
