可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『THE UPSIDE 最強のふたり』

映画『THE UPSIDE 最強のふたり』を鑑賞しての備忘録
2019年のアメリカ映画。
監督は、ニール・バーガー(Neil Burger)。
原作は、フランス映画『最強のふたり(Intouchables)』。
脚本は、ジョン・ハートメア(Jon Hartmere)。
原題は、"The Upside"。

デル・スコット(Kevin Hart)は、銃器所持の罪で収監され、仮釈放中。再収監されない条件は、就職先を見つけるか、採用面接を受けた事業者からの署名を3つもらうかのいずれかだった。飲食と事務の仕事で署名を手にしたデルは高級アパートメントの「用務員」の仕事に目をとめ、面接に向かう。面接会場は最上階のペントハウス。多数の美術品が飾られた美術館のような空間に、ネクタイを締めたような身なりの整った応募者たちが静かに面接を待っており、清掃作業と思っていたデルは面食らう。離婚した妻ラトリス(Aja Naomi King)との間で約束しているアンソニー(Jahi Di'Allo Winston)の迎えの時間に間に合わないと、しびれを切らしたデルは面接の行われている部屋に勝手に入って、秘書のイヴォンヌ(Nicole Kidman)の制止も聞かず、書類へのサインを求める。雇い主は、事故で首から上以外自分で動かすことのできないフィリップ・ラカッセ(Bryan Cranston)で、そのあらゆる挙措を支えることだった。フィリップはなぜか面接中の求職者を退出させ、デルを採用すると言い出す。デルは署名させもらえればいいと断り、イヴォンヌも当惑するが、フィリップは1日考えて答えを出して欲しいと伝え、それでも応諾しないなら署名しようとデルに伝える。結局、アンソニーの迎えの時間には間に合わず、デルはラトリスのアパートに向かう。アンソニーもラトリスも約束を守らないデルに愛想を尽かし、デルが面接の待ち時間に本棚からくすねた『ハックルベリー・フィンの冒険』をアンソニーに誕生日プレゼントとして渡すが、家を追い出されてしまった。居場所のなくなったデルは翌朝フィリップの住まいを訪れ、イヴォンヌに仕事を引き受けると伝える。生きる気力を失っているフィリップが敢えて粗暴なデルを採用しようとしたことを見抜いているイヴォンヌには不安しかない。デルはイヴォンヌから契約書面を提示され、高給に驚きつつも地下鉄のパスを要求すると、四六時中フィリップのそばに控えていなくてはならないと、清潔で居心地の良い部屋を宛がわれる。デルの初仕事はフィリップの朝食の介助だった。まずはベッドから起こさなくてはならないが、車椅子に乗せるのも一苦労。食事を食べさせるというより口に押し込むような介助にフィリップも辟易する。少しずつ仕事を覚えていくデルの前に、セクシーなフィリップ専属の理学療法士マギー(Golshifteh Farahani)が現れ、大いに興奮するが、排泄の介助をしなくてはならないことを知って尻込みするのだった。

 

最強のふたり(Intouchables)』をニューヨークを舞台にリメイクした作品。デルの家族との交流や、フィリップと文通相手との交流、美術やオペラなどを積極的にストーリーに絡めさせている点などで相違点が見られる。逆に原作と同じ展開の導入シーンは、緊張感・スピード感・高揚感において、出来過ぎであった原作に比べてどうしても見劣りがしてしまい、よくまとめられた佳作ではありながら、今ひとつインパクトを弱める効果を生んでしまった。
今作のNicole Kidmanは好印象。Golshifteh Farahaniはセクシー過ぎて、体を壊しそう(ジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』でアダム・ドライバーが変な食事をとらされても耐えられるのも頷ける)。